「結果が出ない自分には価値がない」と思い込んでいるあなたへ。アスリートが持つ本当の3つの価値

コラム

「自分が見たかった景色は、これじゃなかった」

そう呟いて、夢をあきらめ去っていく選手を、私はこれまで数え切れないほど見てきました。

最初は有望視され、誰もが羨むほどキラキラしていた選手たち。しかし、結果が伸び悩むにつれ、次第に目の輝きを失っていく。 生活費を稼ぐためのアルバイトと練習に追われる日々。「結果」という数字に心を削られ、ひたすらに消耗し、最後には競技そのものを嫌いになって去っていく。

結果が出なければ、アスリートに幸福はないのでしょうか?

結論から言えば、決してそんなことはありません。 あなたが大きな目標を掲げ、限界に挑んでいる「今、この瞬間」こそが、アスリートにとっての最大の幸福であり、誰にも奪えない財産だと私は思います。

今回は、かつての私と同じように、「勝てない自分には価値がない」と孤独を感じているあなたへ向けて、アスリートが社会に提供できる「本当の価値」についてお話しします。

「アスリートらしく、清貧であれ」という呪縛

苦しんでいるアスリートの多くは、真面目です。 「プロらしくあらねばならない」「結果が全てだ」「勝てない自分は無価値だ」と思い詰めています。

しかし現実は甘くありません。たとえ好成績を出しても、マイナースポーツであれば高額な賞金が出ることは稀です。大会自体が少ないこともあります。遠征費や道具代で赤字になり、生活は苦しいまま……ということも珍しくありません。

これは、私自身も痛いほど経験しました。 プロを目指していた時期、スポンサー様もつかず、練習が終わった後に深夜までアルバイトをして暮らしていました。

孤独だったアマ時代

当時はとにかく眠かった。 バイト先と練習会場を車で往復する日々。その移動の隙間時間、たった5分でもあれば車を停めて仮眠をとっていました。(今の年齢と体力で考えれば、絶対に体を壊すのでやりませんが、当時は必死でした)

「今回、何位だった?」

周囲からそう聞かれるのが、苦痛で仕方ありませんでした。おそらく、私自身が負のオーラをまとっていたのでしょう。 大会を終えたその足で夜勤のアルバイトに向かい、クタクタになって帰り、また次の大会までの遠征費を稼ぐ。

「俺の見たかった景色には程遠いな……」

そう絶望することもありました。 これは自意識過剰ではなく、「自分の競技者としてのアイデンティティー」を極度に限定していたことが原因でした。

「アスリートは質素倹約に努め、どんなにきつくても耐え抜き、結果を出すまでは泥水を啜って生きていくべきだ」

そんな勝手で狭い視野での思い込みが、自分を孤独に追いやっていたのです。今思えば、本当に寂しく、辛い日々でした。

アスリートの役割は「結果を出すこと」だけなのか?

もちろん、勝利や記録を目指し、そのために努力することはアスリートとして当たり前の前提です。 しかし、お金が尽きた時に夢も尽きる、という悲しい結末を迎えてほしくないのです。

もし、昔の私のように追い詰められているアスリートが、偶然にもこの記事に辿り着いてくれたなら、これだけは覚えておいてほしい。

今のあなたの頑張りは、あなたが思っている以上に、多くの人に夢や希望を与えています。

アスリートが提供できる価値は、「勝利」以外に大きく分けて3つあります。

1. 挑戦する姿(Story)

結果というのは、あくまで「静止画」に過ぎません。 人々が心を動かされるのは、あなたが現在進行形で悩み、苦しみ、それでも前へ進もうとする「ドラマ(物語)そのもの」です。 かっこ悪い姿も含めて、その挑戦のプロセス自体がコンテンツであり、誰かの希望になります。

2. 得た知見をシェアする(Share)

競技を通じて得たものは、単なる「競技スキル」だけではないはずです。 極限状態でのメンタル管理、体調管理、目標達成のための逆算思考。 これらは、一流のアスリートだけが知っている「再現性のある管理術」です。 これを一般の人々が模倣できるレベルにまで言語化して伝えること。それは、社会にとって非常に有益な「機能・経験」という価値になります。

3. 誰かの背中を押す(Empowerment)

これが最も大きな価値かもしれません。 あなたの姿は、相手の中に眠っている「自分にもできるかもしれない」という力を引き出し、自走させるきっかけになります。 単に優しく寄り添うだけではありません。時には相手の心に火をつけ、爆発的なエネルギーを生ませる。 「あの人が頑張っているんだから、私もやるぞ」 そう思わせる力が、アスリートにはあります。

夢のために、全てを犠牲にする必要はない

「夢のために全てを犠牲にする」ことが美徳とされる風潮がありますが、それが唯一の正解ではありません。 視野を広げ、自分の持っている価値(ストーリー、知見、エンパワーメント)に気づくことで、孤独から抜け出し、より長く、より幸福に競技を続ける道が見えてくるはずです。

今、限界に挑んでいるあなたへ。 あなたはすでに、十分すぎるほどの価値を世界に提供しています。 どうか、そのことだけは忘れないでください。

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