
競技費って毎月バラバラで、なんかいっつもギリギリなんだよね。先月とか遠征の2週間前に革ジャン買っちゃって、「あ、これやばいやつだ」ってなったんだけど(笑)。お金のこと考えてると、練習にも頭入んなくて。

それ、「お金が足りない」んじゃなくて「お金の層が混在してる」のが原因だよ。生活費・競技費・遠征費・特別費——この4つを分けて管理するだけで、見え方がガラッと変わる。Layer 4(特別費)まで準備できれば、「お金がないから辞める」という状況はほぼなくなる。
筆者はマリンスポーツ歴20年の現役プロアスリートです。24歳の頃、「やりがいだけ」で競技に飛び込んだ結果、お金の管理をまったくしていなかった。ダブルワークで月収35万円を稼いでいても、なぜかいつも「足りない」感覚が続いた。
原因は稼ぎ方ではなく、「分け方」を知らなかったことだった。今回紹介する4層フレームワークは、その20年の試行錯誤から導いた「引き算の知恵」。お金の勉強は不要。ただ、自分のお金の流れを4つの層に分けて把握するだけでいい。
- アスリートがお金で詰まる「構造的な理由」2つ
- 生活費・競技費・遠征費・特別費を整理する「4層フレームワーク」の全体像
- Layer 1(生活費)を絶対に壊してはいけない理由
- 遠征費を「計画積み立て」に変える具体的な方法
- 社長が実際に用意している特別費(¥300,000)とその根拠
- Layer 4まで備えれば「辞める理由がなくなる」理由

まず結論 ── 4層に分ければ「見えない不安」が消える
アスリートのお金の問題の本質は「稼げないこと」ではなく、「お金の流れが一本の川になっていること」だ。生活費・競技費・遠征費・特別費を4つの層に分けて把握・管理すれば、「今月いくら必要か」が数字で見えるようになる。そしてLayer 4(特別費)まで確保できれば、「お金がないから辞める」という理由はほぼなくなる。
なぜアスリートはお金で詰まるのか ── 2つの構造的な理由
競技を辞めていったアスリートの話を聞くと、「お金が足りなかった」という言葉が出てくることが多い。でも実際のところ、問題は単純な「収入不足」ではないことがほとんどだ。
理由① お金の流れが「一本の川」になっている
「給料が入る → 生活費を払う → 残ったら競技に使う → 足りなくなる」
このモデルでは、競技費は常に生活費の後回しになる。遠征・怪我・道具の故障などイレギュラーが来るたびに、生活費を削ることになる。削れば生活が苦しくなり、精神的にも追い詰められる。これがアスリートの「慢性的なお金の不安」の正体だ。
理由② 「いくらあれば競技を続けられるか」を知らない
毎月の競技費が正確にいくらかかるか、把握しているアスリートは実は少ない。大会前にまとめてかかる遠征費、突然の道具故障 ── これらが「見えない爆弾」として家計を直撃し続ける。
逆に言えば、「いくらあれば競技を続けられるか」が数字で見えれば、不安の9割は解消される。そのために使うのが、4層フレームワークだ。
解決策 ── 4層フレームワークでお金を分ける
お金を「4つの層」に分けて把握・管理する。それだけでいい。順番に見ていこう。

Layer 1 ── 生活費を把握・固定する(最優先)
家賃・通信費・光熱費・食費・衣服費。これが「生きるためのお金」だ。
競技が大切でも、生活が崩れれば競技も崩れる。どんな状況でも、まずここを死守する。
まずやることは、先月の通帳・カード明細を見て、Layer 1の合計額を出すこと。これだけだ。「自分の生活にいくらかかるか」を正確に知ることが、4層管理のスタートラインになる。
「お金の管理」を体系的に学ぶなら、この一冊が入り口になる。アスリートの視点でどう読むか、何から始めるべきかをまとめた。
アスリートが両学長『お金の大学』を読む理由 ── 体より先に「資金の限界」が来ないために
Layer 2 ── 競技費を月単位で予算化する
トレーニング費用・道具の消耗品・コーチ料・会費 ── これが毎月かかる競技費だ。
多くのアスリートが苦しむのは、競技費が「月いくら」かわからないまま使い続けること。1ヶ月間の競技費をすべて書き出して合計額を出す。これを「競技費予算」として毎月の固定費に組み込む。
Layer 1 + Layer 2 = 毎月最低限必要なお金。あとはこの額を稼ぎ続ける仕組みを作ればいい。
Layer 3 ── 遠征費を計画積み立てする
大会参加費・交通費・宿泊費。これが「日常の外にある費用」だ。
よくあるミスは、遠征費を「月々の生活費の中で何とかしようとすること」。遠征月になるたびに生活が苦しくなり、精神的に追い詰められる。遠征費は日常の「外」の費用として別枠管理するのが鉄則だ。
① 大会の日程が決まった時点で、すぐに逆算する
② 例: 3ヶ月後に遠征費¥90,000かかる → 今月から¥30,000ずつ別口で積み立てる
③ 積み立て用の口座(または封筒)を「遠征費専用」にして、日常費と分離する
Layer 4 ── 特別費を別口口座に確保する(これが最後の砦)
予期せぬ怪我、道具の故障・交換・入れ替え。これが「緊急バッファ」だ。

その特別費って、具体的にいくら用意すりゃいい?ヨットの道具ってけっこう高いんだけど。

パーセントじゃなくていい。「自分の競技で一番高価な道具が全損した時に、入れ替えられる金額」を目安にする。競技によって全然違うから、自分の競技で計算してほしい。
僕の場合、マリンスポーツで最も費用がかかる道具が全損した場合、今の価格で約¥300,000になる。これを、毎月の収入とは別の「特別口座」に確保してある。
当時の24歳の僕はこれができていなかった。だから突発的な出費が来るたびに、生活費を削るか競技を我慢するかの二択を迫られた。
① 自分の競技で「最も高価な道具」を1つ特定する
② その道具が全損した時の交換費用を調べる(見積もりでOK)
③ その金額を「別口口座」に積み立てる(日常口座と分ける)
④ 目標額に達したら崩さない。これが「競技継続の保険」になる
Layer 4まで備えれば、競技を「辞める理由」がなくなる
競技を辞めた人の「お金を理由にした退場」を分解すると、ほぼすべてが4層のどこかが崩れている。
- 生活費が足りなくなった(Layer 1が崩れた)
- 競技費が毎月予算オーバーになる(Layer 2が見えていない)
- 遠征のたびに家計が苦しくなる(Layer 3の管理がない)
- 道具が壊れた時に競技を休んだ(Layer 4がなかった)
逆に言えば、4層が整っている状態なら、「お金を理由に辞める」状況は起きない。競技を続けるかどうかを自分の意思で決められるようになる。お金は、競技をやめる言い訳にならなくなる。

「お金がなくて辞める」のと「自分で選んで競技を変える」のは、まったく別のことだ。4層を整えれば、少なくとも前者の理由は消える。「競技を続ける自分の選択は間違ってなかった」と思えるためには、お金の不安をまず取り除くことが先決。
賞金100万円が入っても、すぐに使わない理由
プロになってから、実力がついてから——入賞賞金として100万円が振り込まれる日が来たとします。「ずっと欲しかったバイクを買おう」。その気持ちはわかります。
でも待ってほしい。Layer 4(特別費)が確保できていない状態で、そのお金を使って本当にいいか?
緊急バッファがゼロのままバイクを買えば、次に道具が壊れた時・怪我をした時に競技が止まる。「賞金で買ったバイクはある。でも道具が壊れて次の大会に出られない」——これが競技継続の破綻の典型だ。
4層フレームワークは「欲しいものを買うな」というルールではない。「順番を守れ」というルールだ。
Layer 1〜4が整っていれば、残ったお金で何を買っても構わない。バイクでも革ジャンでも。でも4層が埋まる前に使ってしまえば、その瞬間から「お金で競技を辞めるリスク」が戻ってくる。
計算して、順番を守って生活していく。地味に見えて、長く競技を続けるために最も有意義なことだと、20年の経験から断言できる。
「稼ぎ方」の前に「分け方」があった ── 24歳の僕が知らなかったこと
24歳の頃の僕は、ただ「お金が足りない」という焦りだけで走り出した。鮮魚配送のトラック夜勤・高級レストランの配膳・スクールのインストラクター。3つを掛け持ちして月収¥350,000を稼いでいた。1日の睡眠は3時間を2回に分けて取るのが精一杯だった。
それでも「なぜかいつもお金が足りない」状態が続いた。
原因は稼ぎ方ではなく、分け方を知らなかったことだった。すべてのお金が「一本の川」に流れ込み、競技費・遠征費・緊急費がごちゃ混ぜのまま消えていた。
あの頃の自分に伝えられるなら、こう言う。「まず通帳を開いて、4層に分けてみろ。稼ぐのはそれからでいい」と。
あなたの状況は違っても、原則は同じ
実家暮らし、一人暮らし、企業所属、アルバイト掛け持ち——収入の形は人それぞれ違います。筆者自身、アルバイトをしながらプロを目指していた時期がありました。この記事の4層フレームワークは、どんな収入状況にも適用できる基本原則として書いています。
「すぐにLayer 4まで準備しろ」とは言いません。今すぐ難しい方がいることも、当然あると思っています。
大切なのは、今からできることを確実に・着実に積み上げていくこと。一気にやる必要はない。Layer 1の把握から、できるところから始めれば十分です。
スポーツに真剣に向き合っている人は、すでにたくさんのことを学び続けています。お金の管理も、競技を続けるための「学び」のひとつ。その姿勢がある人なら、必ずできます。
まとめ ── 4層フレームワークで競技を続ける

Layer 4まで備えれば、「お金がないから辞める」という理由はなくなる。競技を続けるかどうかは、お金ではなく自分の意思で決められるようになる。


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