翌日まで脚が動かない「末梢性疲労」は、根性ではなく筋肉の化学反応の問題。代謝産物蓄積/微小損傷/エネルギー枯渇の3つが正体。対処は「化学反応→物理処置→栄養タイミング」のエンジニア式処方箋。HRVや血中乳酸で「休むか動くか」を判断する。

最近、ハードに追い込んだ翌日って脚が動かんねん。
ジムで毎日のように練習しとるんやけど、連戦の終盤になると粘れんようになる…。
これ、ただの寝不足ちゃうやんな?俺の根性が足らんだけなんかな…?


え、マジで?脳の疲れと筋肉の疲れって別もんなんか…!
乳酸って言葉は聞いたことあるけど、結局俺の脚で何が起きとるのかさっぱりや…。
ほんで、休むべきか動くべきかって、いつも勘で決めとるねんけど…合っとるん?


自分の体を機材として整える…その発想なかったわ。
俺、毎日トレーニング続けたいし、ライバルより早く回復して、次に備えたいねん。
具体的に何をどのタイミングですればええん?できれば論文の根拠もセットで頼むわ。

「ライバルより早く回復して、次に備えたい」──その姿勢、めちゃくちゃ大事。
競技を続ける人ほど、自分の体を機材として正確に整える発想が効く。
この記事では 「末梢性疲労の正体 → 中枢性との違い(早見表) → 3つのメカニズム → 休むか動くかの判断指標 → エンジニア式処方箋 → 試合終盤・連戦サバイバル → よくある誤解 → まとめ」の順で、論文の出典(PMID)を全部つけて一緒に整理しよう。
「翌日まで脚が動かない」── あなたの筋肉で今、何が起きているか
翌日まで脚が動かないのは末梢性疲労?中枢性疲労?
「脚が重い・特定の筋肉が痛む・つる」が前面なら末梢性疲労(筋肉そのものの疲労)。「頭がぼんやり・気分が沈む・眠っても取れない」が前面なら中枢性疲労。両者は仕組みも対処も違うため、まず見分けるのが第一歩になる。
- 末梢性:脚が重い・特定筋肉が痛む・つる が前面
- 中枢性:頭がぼんやり・気分が沈む・眠っても取れない が前面
- 第一歩:仕組みも対処も違うのでまず見分ける
ハードに追い込んだ翌日、ベッドから起き上がるだけで脚が重い。ジムに向かう途中、階段を上る一歩で「今日はダメだ」と分かる──競技を続けるアスリートなら、誰もが何度も経験する感覚だ。
でも、「疲れた」とひと言で片付けるには、その状態はあまりにも複雑だ。あなたの脚で何が起きているのか、まずは症状から自己診断してみよう。
- 練習翌日、特定の筋肉(主に脚)が重く・硬く感じる
- 階段の下りで太ももが痛む(上りより下りで症状が出る)
- 連戦・連日トレーニングの後半で、明らかに出力が落ちる
- つる・けいれんが起きやすくなる
- 軽く動かすと少し楽になる感覚がある
- 休むだけでは2〜3日経っても完全に戻らない
- 頭(集中力・気分)はそこまで落ちていない
4つ以上当てはまるなら、あなたが感じている疲労は「末梢性疲労」──つまり筋肉そのものの疲労である可能性が高い。
逆に、「頭がぼんやりする」「気分が沈む」「眠っても取れない」が前面に出ているなら、中枢性疲労(脳の疲労)が主役の可能性がある。両者は仕組みも対処も違うので、まずは見分けることが第一歩になる。
脚に何が起きているか分かったら、まず種類の整理。──末梢性疲労と中枢性疲労の違いを30秒で。
末梢性疲労 vs 中枢性疲労 ── 早見表で違いを30秒で把握
末梢性疲労と中枢性疲労は何が違う?
発生場所が違う。中枢性は脳・脊髄、末梢性は筋肉・神経筋接合部で起きる。回復も中枢性は練習量や睡眠の「引き算」、末梢性は物理処置と栄養タイミングの「能動介入」が主役。連戦やシーズン終盤は両者が混在する。
- 発生場所:中枢=脳・脊髄 / 末梢=筋肉・神経筋接合部
- 回復の主役:中枢=練習量・睡眠の引き算 / 末梢=物理処置・栄養の能動介入
- 混在:連戦・シーズン終盤は両方同時に疲労する
「疲労」と一括りに語られがちだが、スポーツ生理学では大きく2系統に分けて理解するのが基本だ(Gandevia 2001)。両者は発生場所も、症状も、回復手段も違う。
| 観点 | 中枢性疲労(脳の疲労) | 末梢性疲労(筋肉の疲労) |
|---|---|---|
| 発生場所 | 脳・脊髄(中枢神経) | 筋肉・神経筋接合部(末梢) |
| 主な原因 | セロトニン上昇/キヌレニン経路など | 乳酸・H+蓄積/微小損傷/エネルギー枯渇 |
| 主な症状 | 気分の重さ/集中低下/「やる気が出ない」 | 脚が動かない/特定筋肉の痛み/つる |
| 典型的な場面 | 長時間運動の後半・連日の練習積み重ね | 高強度直後・連戦の終盤・翌日まで残る |
| 回復の主役 | 練習量・睡眠・情報量の引き算 | 物理処置・栄養タイミング・能動介入 |
| 感覚的な違い | 「やる気が出ない・頭が重い」 | 「動こうとしても脚が動かない」 |
末梢性疲労の3大メカニズム ── 乳酸・微小損傷・エネルギー枯渇
末梢性疲労の3大メカニズムは時間経過でどう違う?
正体は3つ。①代謝産物(H+・無機リン酸)の蓄積は運動直後〜数時間で収縮力を落とす。②微小損傷(EIMD)は翌日〜2日後にピークの筋肉痛。③エネルギー枯渇は連戦・長時間で出力が出なくなる。実際は混在することも多い。
末梢性疲労の正体は、研究レベルでは3つの主要メカニズムに分けて整理されている(Allen 2008・Westerblad 2010)。それぞれ「いつ・どんな運動で・どれくらい長く続くか」が違う。
メカニズム① 代謝産物の蓄積(乳酸・H+・無機リン酸)
高強度の運動を続けると、筋肉内に水素イオン(H+)・無機リン酸(Pi)などが蓄積する。これらが筋小胞体のカルシウム放出を妨げ、結果として筋収縮の力が低下する(Allen 2008・Sahlin 1998)。
「乳酸=疲労物質」という古い理解は、現代では不正確とされている(後述の誤解の章で詳しく扱う)。蓄積する代謝産物は乳酸そのものではなく、付随するH+の方が筋機能低下に関与しているという理解が主流だ。
このメカニズムによる疲労は、運動を中止すれば数分〜数時間で多くが回復する。スプリント・高強度インターバルの直後の脚の重さが、この型の典型例。
メカニズム② 微小損傷(EIMD: Exercise-Induced Muscle Damage)
特に伸張性収縮──筋肉が伸ばされながら力を発揮する動き(下り坂走、ジャンプ着地、ウェイトのネガティブ動作など)で発生する。筋繊維やZ線に微小な損傷が入り、炎症性の修復反応が起きる(Clarkson 2002・Cheung 2003)。
EIMD(微小損傷)の特徴は、運動の数時間後〜2日後にピークを迎え、その後数日かけて回復する点だ。「翌日が一番きつい」「2日後にまだ痛い」という遅発性筋肉痛(DOMS)はこの型に該当する。
メカニズム③ エネルギー基質の枯渇(グリコーゲン・ATP・リン酸クレアチン)
長時間運動では、筋グリコーゲンが減少し、ATPの再合成スピードが追いつかなくなる。短時間高強度では、リン酸クレアチンが枯渇する。どちらも「動かそうとしても出力が出ない」状態を生む(Sahlin 1998・Westerblad 2010)。
長距離選手の終盤の失速、ハーフマラソン後半の脚の重さ、連戦の最終日に出力が落ちる感覚は、このメカニズムが大きい。回復には炭水化物の補給と睡眠が要になる。
①数分〜数時間で楽になる → 代謝産物型
②翌日〜2日後にピークの筋肉痛 → 微小損傷(EIMD)型
③連戦・長時間で出力が落ちる → エネルギー枯渇型
実際は混在することが多いが、どれが主役かを意識すると処方箋が選びやすい。
この3つのメカニズムがどれだけ早く進み、どれだけ早く回復するかは、酸素と栄養を届け代謝産物を回収する毛細血管の量にも左右される。
「休むか・動くか」を感覚ではなく数字で判断する
休むか動くかを感覚でなく数字で判断するには?
完璧に揃えず2〜3種を組み合わせるのが現実的。①HRV(心拍変動)で朝の自律神経回復度、②主観的回復度・RPEを毎日記録、③必要なら血中CK(筋損傷の指標)。いずれも絶対値でなく自分の平常範囲との比較で見る。
競技を続けるアスリートが最も悩むのが、「今日は休むべきか・軽く動くべきか・通常通り練習するか」の判断だ。感覚で決めると、休みすぎて鈍る・動きすぎて壊れる、のどちらかに振れがちになる。
研究レベルでは、客観的な指標で判断する方法が複数提案されている(Kellmann 2018・Plews 2013)。完璧に揃える必要はなく、自分のルーティンに合うものを2〜3種類組み合わせるのが現実的だ。
判断指標①: HRV(心拍変動・Heart Rate Variability)
朝起きた直後の心拍変動を測ることで、自律神経の回復度合いを推定する指標。エリート持久系選手で広く検証されており、慢性的な低下傾向はオーバーリーチの兆候とされる[7]。
スマートウォッチ・スマホアプリで測定できる。「個人の平常範囲から有意に下がっているか」が見るべきポイント(絶対値ではなく自分の基準値との比較)。
判断指標②: 主観的運動強度(RPE)・主観的回復度
RPE(Rating of Perceived Exertion)・主観的回復度スケールは、客観性は劣るが毎日記録するだけで傾向が見えるのが利点。Kellmann 2018のコンセンサス声明でも、選手のセルフモニタリングの基本ツールとして推奨されている。
「今日の出力感」「昨日の練習の残り具合」を10段階でメモするだけでも、数週間続ければ自分のパターンが見えてくる。
判断指標③: 筋の局所的な指標(必要に応じて)
競技レベルが上がると、血中CK・血中乳酸を測定する選手も多い。CK(クレアチンキナーゼ)は筋損傷の指標として、乳酸はトレーニング強度の指標として使われる。ただし、個人差が大きいため、自分の平常値を把握した上で「今日はそこから外れているか」を見る必要がある。
判断フロー(参考)
HRV(心拍変動)平常 + 主観回復度が中程度: 強度を1段階下げる(例: 高強度→中強度)
HRV(心拍変動)平常 + 主観回復度が良好: 通常通り練習
主観のみ悪く客観指標が良い: ウォームアップを長めに取り、最初の10分の体感で再判断
判断軸ができたら、具体的な手当てへ。──化学反応→物理処置→栄養の順で組み立てる。
エンジニア式リカバリー処方箋 ── 化学反応 → 物理処置 → 栄養タイミング
末梢性疲労はどんな順序で回復させればいい?
物理処置→栄養タイミング→睡眠の順で組み立てる。物理処置(軽運動・温冷交代浴・圧迫ウェア)は主観的回復感を改善し、栄養は運動直後に炭水化物+タンパク質。ただし睡眠が削られていると全ての処置の効果が打ち消される。
- 物理処置:軽運動・温冷交代浴・圧迫ウェアで血流と主観回復を改善
- 栄養タイミング:運動直後に炭水化物+タンパク質を補給
- 睡眠が土台:削られていると他の処置の効果が打ち消される
3つのメカニズム(代謝産物・微小損傷・エネルギー枯渇)それぞれに、対応する処置がある。ここからが本記事の心臓部──化学反応の理解 → 物理処置 → 栄養タイミングを順番に組み立てる。
処方① 物理処置(運動直後〜数時間)
| 処置 | 主な狙い | 適したタイミング |
|---|---|---|
| 軽運動・アクティブレスト(10〜20分) | 代謝産物の除去促進・血流維持 | 運動直後 |
| 温冷交代浴 or 冷水浸漬(CWI) | 炎症反応の抑制・主観回復感の向上 | 運動後30分〜数時間以内 |
| 圧迫ウェア(コンプレッション) | 静脈還流促進・主観的回復感の改善 | 運動後〜睡眠前 |
| マッサージ・フォームローラー | 筋緊張の緩和・主観的痛みの軽減 | 運動後〜翌日 |
これらは主観的回復感を改善する効果が一定報告されている(Bishop 2008・Kellmann 2018)。ただし「客観的なパフォーマンス回復」を加速するエビデンスは処置によって強弱がある。重要なのは、翌日に同じ強度で動ける状態に近づけることであり、感覚と客観指標の両方が改善する組み合わせを探す。特に冷水浸漬(CWI)は目的によって使い分けが必要──連戦・大会中の試合期は主観回復に役立つ一方、筋力・筋肥大を狙う鍛錬期は、冷却が筋肥大に必要な適応シグナルを鈍らせる可能性があるため避けるのが無難だ。
処方② 栄養タイミング(運動直後〜数時間)
エネルギー枯渇型・微小損傷型の両方に対して、運動後の栄養補給が回復の鍵になる。タイミングは「運動後できるだけ早く」が原則。
運動後数時間以内: 通常の食事で炭水化物・タンパク質・ビタミン・ミネラルを十分に確保
就寝前: 消化に重くないタンパク質(ヨーグルト・カゼイン系プロテインなど)で夜間の修復をサポート
慢性的に意識: 鉄・ビタミンB群・マグネシウム──微量栄養素の欠乏は回復を阻害する
サプリメントの追加(BCAA(分岐鎖アミノ酸)・クエン酸・コエンザイムQ10など)は、食事で十分な人には大きな効果が出にくいことがある。まずはベースの食事を整えてから、不足が明らかな成分を補う順序が現実的。
処方③ 睡眠 ── すべての対処の土台
どんな物理処置・栄養タイミングも、睡眠が削られている状態では効果が打ち消される。成長ホルモン分泌・組織修復・神経系のリセットの大半は睡眠中に起きる。連戦・大会期間中に睡眠を削ってリカバリー処置を増やすのは、優先順位が逆になっている。
試合終盤・連戦のサバイバル戦略
連戦中はどの時間帯に何を優先すればいい?
試合中の終盤は水分・電解質+速吸収の糖質+糖質マウスリンスでしのぐ。連戦は72時間以内の判断が勝負で、第1〜第2試合間(24〜48h)は物理処置と栄養を最優先、48〜72h以降は動き出しを軽く確認する。
「疲労回復」というと「練習後にどうリカバーするか」に意識が向きがちだ。しかし実際の競技現場では、もっと厳しい場面がある──試合中の終盤・連戦のさなかだ。ここをどう乗り切るかで、大会の結果は大きく変わる。
試合終盤(60〜90分以上の競技中)
試合中の脚に来た時の対処は、平常時のリカバリーとは違う。その場でできることに絞られる。
- 水分・電解質の補給(特にナトリウム・マグネシウム)──つる症状の予防
- 速やかに吸収される炭水化物の摂取(ジェル・スポーツドリンクなど)
- 糖質マウスリンスで脳の中枢性疲労を抑える
- 呼吸を意識的に整える(過換気を避け、酸素摂取を安定化)
- 動きの効率化(無駄な力みを抜き、メカニカルなフォームに切り替え)
- 「気合で」ではなく「省エネで」乗り切る発想
連戦中(数日〜1週間)
大会期間中・連戦中のリカバリーは、72時間以内の判断がパフォーマンスを左右する。
第2試合〜決勝(48〜72時間以降): 翌日の動き出しを軽く確認 → 違和感があれば強度をさらに下げる。
大会終了後: 物理的な疲労(末梢性)に加え、メンタル疲労(中枢性)も同時に出る。両方への対処が必要(中枢性疲労ペア記事を参照)。
連戦中に最も避けるべきは、「焦って強度を上げてEIMD(微小損傷)を悪化させる」こと。微小損傷は数日かけて修復するため、回復を急いで負荷をかけると傷が深くなる。
実戦の戦略まで来たら、最後に思い込みを正す。──乳酸・ストレッチ・サウナの神話を解く。
よくある誤解 ── 乳酸・ストレッチ・サウナの神話
末梢性疲労の3つのよくある誤解とは?
3つの俗説は現代のスポーツ生理学で修正されている。①乳酸=疲労物質は誤り(関与はH+・無機リン酸)。②静的ストレッチはEIMDの筋肉痛をほぼ改善しない(Cheung 2003)。③サウナの回復加速効果は示されず、むしろ脱水リスクがある。
末梢性疲労には、根強い俗説が多い。最後に、現代のスポーツ生理学で修正されている代表的な誤解を3つ整理する。論理的な言い訳としても、自分の判断軸としても役に立つ。
誤解① 「乳酸=疲労物質」
これは20世紀の古い理解で、現代では不正確とされている。蓄積する代謝産物のうち、筋機能低下に関与しているのは乳酸そのものではなく、付随するH+(水素イオン)・無機リン酸(Pi)の方が大きい(Allen 2008)。
むしろ乳酸は、運動中に他の筋繊維や脳・心臓のエネルギー基質として使われる。「乳酸を抜く」発想ではなく、「H+蓄積による収縮力低下を時間で解消する」と理解する方が現代的。
誤解② 「静的ストレッチで筋肉痛が消える」
運動後の静的ストレッチは、EIMD(微小損傷)による筋肉痛をほぼ予防・改善しないことが系統的レビューで示されている[3]。柔軟性向上には効くが、筋肉痛対策としての効果は限定的だ。
運動直前の長時間静的ストレッチはパフォーマンス低下リスクすらあるため、動的ストレッチや軽いアクティブレストの方が運動後に向いている。
誤解③ 「サウナで爆速回復」
サウナは血流改善・主観的リラックスには寄与するが、EIMD(微小損傷)やエネルギー枯渇に対する明確な加速効果は示されていない。むしろ脱水リスクがあり、運動後すぐに長時間入ると回復を阻害しかねない。
運動後の物理処置として研究で支持されているのは、温冷交代浴・冷水浸漬・圧迫ウェアのような代謝・血流・炎症に直接働きかける処置の方だ(Bishop 2008)。サウナは「気持ちがいい・主観的に楽になる」までを期待する方が現実的。
まとめ ── 機材(体)として整えれば、明日も同じ脚が動く
翌日まで脚が動かない状態は、怠けでも根性不足でもなく、筋肉という機材の中で起きている化学反応の問題だ。ここまでの内容を整理しておこう。
📌 末梢性疲労 攻略のまとめ
- 正体は3つのメカニズム: 代謝産物蓄積(数分〜数時間)・微小損傷EIMD(翌日〜数日)・エネルギー枯渇(連戦・長時間)
- 中枢性疲労との見分け: 「動こうとしても脚が動かない」=末梢性 / 「やる気が出ない・頭が重い」=中枢性。混在することも多い
- 休むか動くかは数字でも判断: HRV(心拍変動)・主観的回復度を平常範囲と比較する。数値だけで決めず、主観と合わせる
- 攻略は3層構造: 物理処置(交代浴・圧迫・軽運動) × 栄養タイミング(運動直後の炭水化物+タンパク質) × 睡眠(全ての土台)
- 連戦のサバイバル: 72時間以内の判断で大会パフォーマンスが決まる。EIMDの悪化を最も避ける
- 誤解を捨てる: 「乳酸=疲労物質」「ストレッチで筋肉痛が消える」「サウナで爆速回復」は現代の理解では限定的
感覚で「気合で乗り切る」のではなく、化学反応を理解して機材(体)として正確に整える──競技を続けるアスリートにとって、これが現実的な攻略法だ。ライバルが感覚で休んでいる間に、あなたは数値と処方箋で次の練習に入れる。
そして、もし「脚は動くのに、頭が重くてやる気が出ない」状態が続いているなら、それは末梢性ではなく中枢性疲労の問題かもしれない。両方の知識を持っておくと、自分の体に何が起きているかをより正確に見極められる。

私は、脚が重い翌日はまず体を温めてゆるめる「ケア先行」派。あなたの脚リセットは ①入浴やストレッチの物理ケア / ②補給と睡眠の栄養・休養ケア、どっち派? よかったらコメントで教えてください。
戦う君は、ひとりじゃない。アスリートRPG。
参考文献
出典リスト(9件)— タップで表示
- Allen DG, Lamb GD, Westerblad H. 2008. Skeletal muscle fatigue: cellular mechanisms. Physiol Rev. PMID 18195089
- Clarkson PM, Hubal MJ. 2002. Exercise-induced muscle damage in humans. Am J Phys Med Rehabil. PMID 12409811
- Cheung K, Hume PA, Maxwell L. 2003. Delayed onset muscle soreness: treatment strategies and performance factors. Sports Med. PMID 12617692
- Sahlin K, Tonkonogi M, Söderlund K. 1998. Energy supply and muscle fatigue in humans. Acta Physiol Scand. PMID 9578371
- Ament W, Verkerke GJ. 2009. Exercise and fatigue. Sports Med. PMID 19402743
- Bishop PA, Jones E, Woods AK. 2008. Recovery from training: a brief review. J Strength Cond Res. PMID 18438210
- Plews DJ, Laursen PB, Stanley J, Kilding AE, Buchheit M. 2013. Training adaptation and heart rate variability in elite endurance athletes. Sports Med. PMID 23852425
- Kellmann M et al. 2018. Recovery and Performance in Sport: Consensus Statement. Int J Sports Physiol Perform. PMID 29345524
- Gandevia SC. 2001. Spinal and supraspinal factors in human muscle fatigue. Physiol Rev. PMID 11581501
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この記事の用語
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- 末梢性疲労(peripheral fatigue)
-
運動によって筋肉そのものが疲れて動かなくなる状態。代謝産物の蓄積・筋繊維の微小な損傷・エネルギー切れが原因になる。
この記事では中枢性疲労と対比する軸として、記事全体で繰り返し登場する。
- 中枢性疲労(central fatigue)
-
運動によって脳が疲れ、やる気や集中力が落ちる状態。末梢性疲労とは発生場所も回復方法も違う。
この記事では末梢性疲労と対になる概念として早見表で対比され、大会後は両方が同時に出るとも説明される。
- EIMD:運動誘発性筋損傷(exercise-induced muscle damage)
-
運動、特に筋肉が伸びながら力を出す動きで筋繊維に生じる小さな損傷で、1〜2日後にピークとなる筋肉痛の原因になる。
この記事では3大メカニズムの一つとして扱われ、連戦中に悪化させないよう注意が促される。
- DOMS:遅発性筋肉痛(delayed onset muscle soreness)
-
運動後1〜2日たってから出てくる筋肉痛で、筋繊維の微小な損傷が回復していく過程で起こる。
この記事ではEIMDが引き起こす代表的な症状として位置づけられる。
- ATP:アデノシン三リン酸(Adenosine triphosphate)
-
細胞が使う直接のエネルギー分子で、筋肉を動かす燃料になる。運動が長く続くと再合成が追いつかなくなる。
この記事ではエネルギー枯渇型の末梢性疲労の要因として登場する。
- リン酸クレアチン(phosphocreatine)
-
筋肉に蓄えられた即効性のエネルギー貯蔵物質で、高強度運動の最初の数秒〜十数秒で使われ、枯渇すると出力が急に落ちる。
この記事ではATPと並ぶエネルギー基質の枯渇要因として説明される。
- CK:クレアチンキナーゼ(creatine kinase)
-
血液検査でわかる、筋肉の損傷の度合いを示す指標で、数値が高いほど筋繊維へのダメージが大きいことを示す。
この記事では休むか動くかを判断する客観指標の一つとして挙げられる。
- HRV:心拍変動(heart rate variability)
-
心拍と心拍の間隔のわずかなばらつきで、自律神経の回復度合いを映す指標として朝の値を自分の平常範囲と比べて使う。
この記事では休むか動くかを判断する3つの指標の中心に置かれる。
- RPE:主観的運動強度(rating of perceived exertion)
-
運動のきつさを自分の感覚で段階的に数値化する指標で、毎日記録するだけで疲労の傾向がつかめる。
この記事ではHRVと並ぶセルフモニタリングの基本ツールとして紹介される。
- 冷水浸漬(cold water immersion)
-
冷たい水に体を浸けて筋肉や関節を冷やす回復方法で、主観的な回復感の報告がある一方、筋力・筋肥大を狙う時期には合わないことがある。
この記事では試合期と鍛錬期で使い分けが必要な処置として説明される。
- BCAA:分岐鎖アミノ酸(branched-chain amino acids)
-
ロイシン・イソロイシン・バリンの3種からなるアミノ酸のグループで、筋肉のタンパク質を構成する材料の一つ。
この記事では栄養タイミングの章で、食事が十分な人には効果が出にくいサプリメントの例として挙げられる。
- 伸張性収縮(eccentric contraction)
-
筋肉が伸ばされながら力を発揮する動き。下り坂走・ジャンプの着地・ウェイトを下ろす動作などで起こり、筋肉痛の原因になりやすい。
この記事ではEIMD(微小損傷)が発生する典型的な動作として説明される。
- 糖質マウスリンス(carbohydrate mouth rinse)
-
糖質を含む飲料や食品を口に含んですすぎ、飲み込まずに吐き出すテクニック。脳が糖質の存在を感知し、疲労感を和らげるとされる。
この記事では試合終盤の対処として、中枢性疲労を抑える手段の一つに挙げられる。
- オーバーリーチ(overreaching)
-
トレーニングの負荷に回復が追いつかず、疲労が十分に抜けないまま蓄積し始めた状態。放置すると出力低下が慢性化する。
この記事ではHRVの慢性的な低下傾向が示す兆候として登場する。
- 乳酸(lactate)
-
エネルギーを作る過程で筋肉にできる物質。疲労物質ではなく、他の筋肉や脳・心臓のエネルギー源としても使われる。
この記事では「乳酸=疲労物質」という誤解を訂正する章で、繰り返し取り上げられる。
- H+:水素イオン(hydrogen ion)
-
運動で筋肉にたまる物質の一つで、カルシウムの放出を妨げ、筋肉の収縮力を一時的に落とす。
この記事では代謝産物型の疲労の主因として、無機リン酸と並んで説明される。
- 無機リン酸(inorganic phosphate)
-
運動で筋肉にたまる物質の一つで、水素イオンと同様にカルシウムの放出を妨げて収縮力を落とす。
この記事では代謝産物型の疲労の主因として、水素イオンと並んで説明される。
- 代謝産物(metabolites)
-
運動でエネルギーを作る過程で筋肉にたまる物質の総称。水素イオンや無機リン酸などが含まれ、蓄積すると筋収縮の力が落ちる。
この記事では3大メカニズムの一つ「代謝産物型」として、微小損傷型・エネルギー枯渇型と並ぶ。


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