カーボローディングが効くのは90分以上続く持久系競技。試合3〜4日前からの2つのやり方・競技別メニュー・胃腸トラブル対策を解説する。
✅ 本記事で得られること
👤 こんな方におすすめ
- マラソン・駅伝・トライアスロンなど、90分以上続く大会が近い人
- カーボローディングという言葉は知っているが、何をすればいいか分からない人
- 過去に大会前の食事でお腹の調子を崩した・むくみが不安な人
今度の大会前、ご飯の量を増やせって聞いたけど本当に効果あるの?
効果はある。ただ全員に必要じゃない。90分以上続く競技かどうかがカギだよ。
え、うちの競技だと微妙かも…。じゃあ何日前から?何を食べればいいの?
そこが今回の本題。何日前から・競技別の献立・失敗しない食べ方まで見ていこう。
カーボローディングとは何か──全員に必要なわけではない
カーボローディングは自分の競技にも必要?
カーボローディングとは、試合に向けて筋肉と肝臓のグリコーゲンを意図的に増やしておく栄養戦術のこと。90分以上続く持久系競技──マラソン、駅伝、トライアスロン、長時間の自転車競技など──で有効性が確認されている(Hawley et al. 1997)。
- 90分が分かれ目:90分以上続く持久系競技でなければ、糖質摂取による一貫した効果は確認されていない(Hawley 1997)
- 体重増加は水分:増えた体重の正体は脂肪ではなく、グリコーゲンに結合した水分(Olsson & Saltin 1970)
- 効果は絶対ではない:グリコーゲンを増やしても記録が伸びない例も報告されている(Sherman 1981)
一方、60〜90分程度で終わる中強度の運動では、開始時にグリコーゲンを増やしても運動終了時点でまだ大量に残っており、恩恵が乏しいとされる[4]。瞬発力や筋力が中心の種目でも、効果は同様に限定的だ。
「増やせば増やすほど速くなる」わけでもない。ある研究では、複数のやり方でグリコーゲンを200 mmol/kg前後まで高めても、20.9kmランのタイムに明確な差は出なかった。カーボローディングは「やれば必ず記録が伸びる魔法」ではなく、「持久系競技でエネルギー切れのリスクを減らす保険」と捉えるのが実態に近い。
まずは自分の競技が90分ルールに当てはまるかどうかを確認しよう。当てはまるなら、次は「いつから・どうやって」始めるかだ。
いつから始める?3〜4日法と1日法、2つのやり方
カーボローディングは何日前から始める?
やり方は主に2つ。3〜4日法は試合3〜4日前から毎日糖質を段階的に増やし8〜12g/kg/日を目安にする(Burke et al. 2011)。1日法は高強度運動の翌日、完全休息+10g/kg/日の高糖質食で24時間以内にグリコーゲンをほぼ倍増させる急速な方法(Bussau et al. 2002)。
3〜4日法は昔からある王道で、急激な体重変化が少なく胃腸への負担も分散しやすい。日常の食事量から徐々に主食を増やし、揚げ物や脂質の多いおかずを控えて糖質の割合を上げていく。
1日法は、持久系トレーニング済みの選手8人を対象にした小規模な研究[2]がもとになっている。運動直後にグリコーゲンが空になった状態から、完全休息+高糖質食で24時間以内に95→180 mmol/kg湿重量まで一気に増やせたと報告されている。時間がない時の選択肢として知られているが、研究例はまだ少なく、上級者向けと考えた方がいい。
迷ったら3〜4日法から試すのが無難。では、実際に競技別でどう変わるのか──具体的な実践メニューを見ていこう。
【競技別】実践メニューと糖質量の目安
競技によって糖質の量は変わる?
持久系競技であれば、体重1kgあたり8〜12g/日の糖質を目安にするのが基本(Burke et al. 2011)。ただし種目によって「増えやすさ」は違い、サイクリングはランニングよりもグリコーゲン増加量が約1.7倍大きいとの報告もある(Solem et al. 2025)。
マラソン・駅伝は最も研究が蓄積している種目。3〜4日前からご飯・うどん・そば・さつまいもなど主食の量を普段より多めに増やし、揚げ物や脂の多い肉を控える。補食にはあんこ・バナナ・はちみつなど消化の速い糖質を使うと、胃腸への負担が少ない。
トライアスロンも持久要素が中心のため考え方は同じ。ただしスイム・バイク・ランと種目間で胃の状態が変わるため、当日の補給は普段の練習で試した組み合わせに絞るのが安全だ。
サッカー・バスケットボールなどの球技は少し注意がいる。90分を超えるプレー時間はあっても、動きは間欠的で、持久系種目のような一定強度ではない。カーボローディングを検証した一次研究の多くはマラソン・自転車・競歩が中心で、球技特有の効果を確かめた研究は2026年時点で見当たらない。理論的な準用はできても、実証されているわけではないと理解しておこう。
また、グリコーゲンに伴う水分でわずかに体が重くなるため、俊敏な切り返しが必要な球技では感覚が変わることもある。そのため間欠的な競技では、試合前に貯め込む量はほどほどにし、不足分は試合”中”の補給で補うという組み立てが向いている。
量の目安が見えたところで、次はデメリットと失敗パターンを正直に見ておきたい。
デメリットと失敗パターン──体重増加・胃腸トラブルの正体
カーボローディングのデメリットは何?
「体が重い」と感じるのは脂肪が増えたわけではない。グリコーゲン1gに対して水分が約3〜4g結合して貯留されるためで(Olsson & Saltin 1970)、これはむくみではなくエネルギーを蓄えている証拠だ。
- 体が重く感じる:グリコーゲン1gに水分約3〜4gが結合して貯留されるため、体重が一時的に増える(Olsson & Saltin 1970)
- 胃腸トラブルは一律ではない:競歩選手の試験では高糖質戦略群で症状が悪化した一方、マラソン選手の試験では明確な群間差がなかった。対象者・運動条件・糖質源・摂取間隔が同時に異なるため、差の原因は一つに絞れない(King et al. 2022)
- 前日だけの大量摂取は危険:段階的に増やさず前日に詰め込むと消化不良のリスクが上がる
胃腸トラブルの出方は一律ではない。同じ研究チームの2つの試験では、競歩選手を対象にした試験で高糖質戦略群の胃腸症状が悪化した一方、マラソン選手を対象にした試験では明確な群間差がなかった(King et al. 2022)。マラソンの試験では対象者だけでなく糖質源・1回量・摂取間隔も変更されているため、結果の違いを種目または補給法の一方だけでは説明できない。なおこの研究は高糖質食・腸のトレーニング・運動中補給を組み合わせたもので、カーボローディング単独の影響を示したものではない。いずれにせよ「カーボローディング=必ずお腹を壊す」と決めつけるのは正しくない。
失敗の典型パターンは「前日だけ大量に食べる」こと。段階的に増やさず前日に詰め込むと、消化不良や当日の腹部不快感につながりやすい。3〜4日かけて主食を少しずつ増やし、脂質の多いおかずを控えることで、胃腸への負担を分散できる。
デメリットへの対処が分かったところで、実際に「何を使って」量を確保するかという実務的な話に移ろう。
献立作りに迷ったら──市販の炭水化物補給食品という選択肢
市販の炭水化物補給食品はどう使う?
1日600〜1000g、体重1kgあたり8〜10gという目標量(Kerksick et al. 2017)は、白米やうどんだけで到達しようとすると量が多く、胃への負担も大きい。ここで市販の炭水化物補給食品を組み合わせると、無理なく糖質量を積み増せる。
マルトデキストリンや粉飴は無味に近く、水や飲み物に溶かして飲めるため、固形物を大量に食べずに糖質を追加できるのが利点だ。練習の合間や食後のドリンクに混ぜるだけで、食事量を無理に増やさずに糖質摂取量を底上げできる。
よくある質問
Q. カーボローディング中にプロテインは摂ってもいい?
A. 問題ない。目的は糖質の割合を上げることなので、タンパク質を無理に減らす必要はなく、脂質を少し控えてカロリーバランスを保つ程度でいい。
Q. 中学生や高校生の部活でもやっていい?
A. 90分以上の持久系種目に出るなら考え方は同じだが、成長期は食事管理が複雑になりやすい。急に量を増やしすぎず、通常の食事をベースに主食を少し増やす程度から試すのが無難だ。
Q. 1日法と3〜4日法、どっちを選べばいい?
A. 初めてなら3〜4日法が無難。1日法はまだ研究例が少なく、完全休息が必須という条件もあるため、経験者向けと考えておこう。
Q. カーボローディングをしても記録が伸びないことはある?
A. ある。グリコーゲンを高めても、走行タイムに明確な差が出なかった研究例もある(Sherman et al. 1981)。エネルギー切れのリスクを減らす保険と捉え、過度な期待はしないほうがいい。
Q. サッカーやバスケットボールなどの球技でも効果はある?
A. 持久系競技ほど明確な実証データはない。間欠的な運動特性を考えると理論的には一定の効果が期待できるが、球技特有の効果を確かめた一次研究は見当たらないため、過信は禁物だ。
まとめ──カーボローディングは「魔法」ではなく「保険」
カーボローディングが効果的なのは、90分以上続く持久系競技。3〜4日法と1日法の2つのやり方があり、初めてなら3〜4日法が無難だ。
体重増加は脂肪ではなく水分の貯留であり、胃腸トラブルも種目によって出方が違う。前日だけ大量に食べるのではなく、数日かけて主食を増やし、市販の炭水化物補給食品もうまく使いながら、無理なく実践してほしい。
女性アスリートも基本の考え方は同じだ。卵胞期は貯蔵量がやや低いとする小規模研究もあるが、体調の波で糖質の入り方が変わっても、数日かけて増やせば十分補える。
海上競技の大会前は、海に出たら何も口にできない。
だから朝からしっかり食事をとり、日本から持参したマルトデキストリンを現地のジュースに混ぜて飲んでいた。
※あくまで個人の経験です。すべての人に当てはまるものではありません。
戦う君は、ひとりじゃない。アスリートRPG。
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参考文献・出典
出典リスト(8件)— タップで表示
- Burke LM, Hawley JA, Wong SH, Jeukendrup AE. (2011) Carbohydrates for training and competition. J Sports Sci. 3〜4日前から8〜12g/kg/日の糖質摂取を推奨。PubMed PMID 21660838
- Bussau VA, Fairchild TJ, Rao A, Steele P, Fournier PA. (2002) Carbohydrate loading in human muscle: an improved 1 day protocol. Eur J Appl Physiol. 高強度運動+高糖質食で24時間以内にグリコーゲン倍増(n=8)。PubMed PMID 12111292
- Kerksick CM, et al. (2017) ISSN Position Stand: Nutrient Timing. J Int Soc Sports Nutr. 最大貯留には8-10g/kg/日または600-1000g/日を推奨。PMC5596471
- Hawley JA, Schabort EJ, Noakes TD, Dennis SC. (1997) Carbohydrate-loading and exercise performance: an update. Sports Med. 90分未満の運動では恩恵が乏しいとするレビュー。PubMed PMID 9291549
- Olsson KE, Saltin B. (1970) Variation in total body water with muscle glycogen changes in man. Acta Physiol Scand. グリコーゲン1gに水分約3〜4gが結合。PubMed PMID 5475323
- Solem SM, Clauss O, Jensen J. (2025) メタ解析. Frontiers in Physiology. サイクリングとランニングのグリコーゲン増加量比較。PMC12399638
- King A, et al. (2022) Carbohydrate loading and gastrointestinal symptoms. Nutrients 14(9):1929. 種目により胃腸症状の方向が異なることを報告。MDPI論文リンク
- Sherman WM, Costill DL, Fink WJ, Miller JM. (1981) Effect of exercise-diet manipulation on muscle glycogen and performance. Int J Sports Med. グリコーゲン増加とパフォーマンスが必ずしも比例しない例。PubMed PMID 7333741
この記事の用語
本文の点線つきの語をタップすると、同じ説明がその場に出ます。
- カーボローディング(Carbohydrate Loading)
-
試合に向けて筋肉と肝臓のグリコーゲンを意図的に増やしておく栄養戦術で、体内のエネルギー貯蔵量を高めておくことでエネルギー切れのリスクを減らす狙いがある。
この記事では、90分ルールによる要否の判定・3〜4日法/1日法のやり方・競技別メニューを順に扱っている。
- グリコーゲン(Glycogen)
-
糖質を体内に蓄えておくための貯蔵形態で、筋肉と肝臓に主に蓄積され、運動時に分解されてエネルギー源として使われる。
この記事では、カーボローディングによって意図的に増やす対象として繰り返し登場する。
- 3〜4日法
-
試合3〜4日前から糖質の摂取量を毎日少しずつ増やしていく、カーボローディングのやり方の一つ。体重1kgあたり8〜12g/日が目安。
この記事では、初めての人にまず勧める基本のやり方として紹介している。
- 1日法
-
高強度運動の翌日に完全休息を取り、体重1kgあたり10g/日の高糖質食を組み合わせて、24時間以内に一気にグリコーゲンを増やす急速なやり方。
この記事では、時間がない人や経験者向けの選択肢として、研究例がまだ少ない点とあわせて紹介している。
- マルトデキストリン(Maltodextrin)
-
でんぷんを分解してつくられる、甘みが少なく水に溶けやすい糖質の一種で、固形物を増やさずに糖質を補給する目的で使われる。
この記事では、白米などの主食だけでは目標量に届きにくい分を上乗せする手段として登場する。
- 粉飴
-
でんぷんを分解してつくられる、マルトデキストリンとほぼ同じ性質の糖質甘味料で、水や飲み物に溶かして手軽に糖質を補給できる。
この記事では、マルトデキストリンと並ぶ市販の炭水化物補給食品の例として登場する。
- 間欠的
-
止まる動作と走る動作を繰り返すように、一定の強度が続かず途切れながら行われる運動の性質を指す。
この記事では、サッカーやバスケットボールなど球技の運動特性を説明する際に使われている。
- 卵胞期
-
月経周期のうち、月経終了後から排卵までの期間を指す言葉で、エストロゲンというホルモンの分泌が優位になる時期にあたる。
この記事では、この時期はグリコーゲンの貯蔵量がやや低いとする小規模研究があると触れている。
- 湿重量
-
組織を乾燥させずに測定したときの重さを表す言葉で、グリコーゲンの濃度を示す単位(mmol/kg湿重量)に使われる。
この記事では、1日法でグリコーゲンがどれだけ増えたかを示す研究データの単位として登場する。


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