ランニングエコノミーは走りの燃費(ml/kg/km)。数値が小さいほど良く、対応するランニングウォッチで測れる。シューズは速度しだいで燃費を数%動かすが、個人差もある。測って、過去の自分と比べながら上げていく。
✅ 本記事で得られること
- ランニングエコノミーが何を測っている数値なのかが分かる
- 自分の燃費をウォッチで測る条件と、機器がなくても代わりに確かめる方法が分かる
- シューズが燃費をどれだけ動かすのか、速度と個人差の条件つきで分かる
👤 こんな方におすすめ
- 昨日の自分より強い強度で、長く戦えるようになりたい競技者
- ペースを上げるとすぐ息が上がる、終盤まで体力がもたない──その両方に心当たりがある人
- フォーム改善をがんばってきたけれど、変わった実感がない人
- ランニングウォッチに出てくる「ランニングエコノミー」の意味と基準を知りたい人
ランニングウォッチに「ランニングエコノミー」って数値が出てきたんです。走りの効率のことらしいんですけど、何を測っている数値なんですか? ペースを上げるとすぐ苦しくなるのと、関係ありますか?
ランニングエコノミーは走りの燃費です。同じ距離を走るのに使う酸素の量で、数値が小さいほど、少ない酸素で同じ距離を進めています。同じ練習をしているのに差がつく理由のひとつが、この効率です。
燃費…! それって自分でも測れるんですか? 上げる方法も、シューズとかフォームとか色々聞くけど、何がどれだけ効くのか分からなくて…。
対応するランニングウォッチなら数値で見られますし、なくても代わりの方法があります。シューズが燃費をどれだけ動かすかも、条件つきで研究に数字が出ています。測り方から、以下で詳しく見ていこう。
ランニングエコノミーとは何か──速さではなく「燃費」を測る数値
ランニングエコノミーとは何を測っている数値なのか?
ランニングエコノミーは、同じ距離を走るのに体がどれだけ酸素を使うかを表す数値だ。Garminの公式マニュアルは単位を ml/kg/km と定義している。体重1kgあたり1km進むのに何mlの酸素を使ったか、という読み方になる。数値が小さいほど燃費が良い。速さそのものではなく、走りの効率を測っている。
- 測るもの:同じ距離を走るのに使う酸素の量
- 単位:体重1kgあたり1kmで何mlの酸素を使うか(ml/kg/km)
- 良い状態:数値が小さいほど少ない酸素で同じ距離を進めている
- 最大酸素摂取量との違い:エンジンの大きさではなく、燃料の使い方の上手さ
効率が上がると、体感は2つの形で返ってくる。同じペースが楽になるか、同じ苦しさでもっと速く、もっと長く進めるかだ。どちらも同じことの裏表になる。昨日より強い強度で戦えるようになりたいなら、伸ばす先はここにある。
車で言えば、最大酸素摂取量はエンジンの排気量にあたる。ランニングエコノミーはリッター何キロ走れるかにあたる。排気量が同じ2台でも、燃費が違えば同じガソリンで進める距離は変わる。走るときも同じで、心肺の能力が近い2人でも、効率が違えば同じ苦しさで進める距離が変わる。
同じ練習をしている2人で差がつく理由
チームメイトと同じメニューをこなしているのに、ペースを上げた場面で先に苦しくなる。あるいは終盤まで体力がもたない。この2つの説明のひとつが効率の差だ。同じペースで走っていても、片方が少ない酸素で進めているなら、残りの余力が違ってくる。
そして効率は、心肺の能力とは別に伸ばせる。ここが実務上いちばん大事な点になる。心肺機能を上げるには時間がかかるが、効率のほうには、もっと早く動く部分がある。
数値が小さいほど良い、という読み方の落とし穴
ランニングエコノミーは数値が小さいほど良い。ただし他人と比べる数値ではない。体格・脚の長さ・競技歴で基準がずれるからだ。
見るべきは、過去の自分からの向きになる。先月より小さくなっているなら、やってきたことは効いている。
では、自分の燃費は今いくつなのか。まず測るところから始めたい。
自分のランニングエコノミーを測る──ウォッチでの測り方と代わりの方法
自分のランニングエコノミーはどうやって測るのか?
ランニングエコノミーはランニングウォッチで測れるようになった。Garminは2025年5月にForerunner 970で指標を提供開始している。必要なのは接地時の速度低下を測れるHRM 600などの機器と、30分以上の平坦な屋外走かトラック走。室内走とトレイル走は計算に使われない。
ランニングエコノミーは、感覚ではなく数値で確かめられる。数字を残しておけば、先月の自分と比べられる。
Garminの公式マニュアルによると、ランニングエコノミーの算出にはプロフィール情報・走行履歴・心拍・速度・ランニングダイナミクスが使われる。単位は ml/kg/km で、数値が小さいほど効率が良い。
正しく測るための条件は決まっている
数値を出すには条件がある。マニュアルが挙げているのは次の3点だ。
- 接地時の速度低下を測れる対応機器(HRM 600 など)を装着していること
- 屋外走かトラック走を複数回記録していること
- 30分以上のゆっくりしたペースで、トラックか平坦な場所を走ること
室内走とトレイル走は計算に使われない。測る日は、測るための走り方をすると考えたほうがいい。
機器がなくても、代わりに見られるもの
対応機器を持っていない場合でも、効率の変化を推し量る方法はある。同じコース・同じ距離を、同じ心拍で走ったときのタイムを残すやり方だ。
心拍が同じなら体にかかっている負担も近い。その条件でタイムが縮んでいるなら、効率は上がっている。専用の数値ほど正確ではないが、向きは分かる。
私自身、時計はApple Watchを使っている。ここで紹介したランニングエコノミーの数値は、手元には出ない。
測れるようになったら、次に気になるのは、何が燃費を動かすのかだ。
シューズは走りの燃費を数%動かす──ただし条件つき
シューズを替えるとランニングエコノミーはどれくらい変わるのか?
カーボンプレート入りシューズの効率改善は14〜18km/hで約4%と報告されている。ただし速度が落ちると効果も落ち、10km/hで0.9%、12km/hで1.4%にとどまる。さらに個人差が大きく、Knopp らの検証では+11.4%から−11.3%までばらついた。全員が同じだけ速くなる道具ではない。
燃費を動かす要因の中で、いちばん数字で確かめられているのがシューズだ。
厚底カーボンシューズを扱ったレビュー(2025)は、Hoogkamer らの検証で14〜18km/hのペースにおいて約4%の効率改善が見られたと整理している。実際のレース結果への反映は1〜2%程度とされている。
ただし「誰でも4%速くなる」という話ではない
ここは正直に書いておきたい。4%という数字には条件がついている。
まず速度だ。約4%が出ているのは14〜18km/hで、キロ3分20秒からキロ4分20秒くらいの範囲になる。Joubert らが遅いペースで測ると、改善は12km/hで1.4%、10km/hでは0.9%まで下がった。ゆっくり走る人ほど、恩恵は小さくなる。
次に個人差がある。Knopp らの検証では、市民ランナーで +9.7%から−1.1%、ケニアの選手で +11.4%から−11.3% という幅が出ている。履くと効率が悪くなる人が実際にいるということだ。同じレビューは、すでに走りが安定していて効率の良い選手ほど、改善の幅は小さくなりうるとも述べている。
レースペースが速く、本番用の1足を選ぶなら、効率の面で有利になる可能性が高い。一方でキロ5分より遅いペースが中心なら、期待できる差は小さくなる。さらに合う・合わないの個人差が大きいので、いきなり本番で下ろさず、練習で自分の反応を確かめてから使う。
道具が効くもうひとつの理由は、疲れと怪我を遠ざけること
効率の数値だけが道具の役割ではない。体に合った道具は、疲労や故障からも自分を遠ざけてくれる。
足に合わないシューズで走り続ければ、どこかをかばう動きが出る。かばう動きは余計なエネルギーを使うし、痛みの入口にもなる。効率と故障予防は、道具のところでつながっている。
シューズで動くのは数%、しかも条件つきだ。ここから先は、自分の走り方の話になる。
フォームは言葉にすると変えられる
フォームの改善はランニングエコノミーにどう効くのか?
フォームは数値化しにくいが言語化はしやすい。目線をどこに置くか、腕をどこまで引くか、動作をひとつずつ言葉に分解できる。言葉にできれば練習の中で調整でき、何をどう変えたかを記録に残せる。感覚だけで直そうとすると再現できないが、言葉にした瞬間から扱える対象になる。
- 言葉にする:目線・腕の振り幅など、動作をひとつずつ言葉に分解する
- 記録する:何をどう変えたかを残せば、後から振り返れる
- 一度にひとつ:複数を同時に変えると、何が効いたのか分からなくなる
- 数字で裏を取る:接地時間や上下動の変化で、感覚だけに頼らない
フォームの難しさは、効かないことにあるのではない。言葉にしないと再現できないことにある。
「もっとリラックスして」「体幹を使って」という言い方では、翌日の自分に伝わらない。翌日の自分は今日の感覚を覚えていない。
感覚を言葉に翻訳しておく
再現できる形にするには、動作を分解して言葉にする。
- 目線を10m先の地面に置く
- 腕は後ろに引く、前に振り出さない
- 接地は体の真下、足を前に出しにいかない
ここまで具体的にすれば、翌日も同じことを試せる。うまくいかなければ、どの言葉を変えたのかも残る。言語化は、動作に再現性を持たせるための作業になる。
一度にひとつしか変えない
フォームで失敗しやすいのは、複数を同時に変えることだ。3つ変えて速くなっても、どれが効いたのか分からない。効かなかったときも同じで、原因が特定できない。
ひとつ変えて、数回の練習で確かめて、残すか戻すかを決める。地味だが、この進め方がいちばん早い。
では、走ること以外で燃費を押し上げる手はないのか。次は筋トレの話になる。
筋トレはランニングエコノミーに効くのか──やり方で結論が変わる
筋力トレーニングはランニングエコノミーを改善するのか?
筋力トレーニングの効果は方法と速度によって結果が割れる。Sports Medicine(2024)のメタ分析では、高負荷や複合的な方法で小さな改善が見られた一方、サブマックス負荷や等尺性のみでは改善が確認されなかった。プライオメトリクスは12km/h以下の速度域で小さな改善を示している。効くが、やり方を選ぶ。
筋力トレーニングは効率に効く。ただし調べるほど、条件によって結論が変わることが分かる。
Llanos-Lagos らによる Sports Medicine(2024)のメタ分析は、方法ごとに効果を分けて整理している。高負荷を使った方法と複数の方法を組み合わせた場合には小さな改善が見られたが、サブマックス負荷だけ、あるいは等尺性だけでは改善が確認されなかった。プライオメトリクスの効果も、速度域によって出方が違っている。
同じ「筋トレ」でも結論が分かれる
「ランナーは筋トレをすべきか」という問いに、ひとつの答えが返ってこないのはこのためだ。何をどれくらいの負荷でやるかで、結果が変わる。
加えて、筋力は怪我をすれば落ちるし、体重が動けば走りへの影響も変わる。数字は出るのに、原因の切り分けが難しい。だからこそ、取り入れたら燃費を測って、自分に効いているかを確かめながら進めたい。
よくある質問
高いシューズを買えばランニングエコノミーは上がりますか?
価格と効率は直結しません。カーボンプレート入りのシューズで報告されている約4%の改善は14〜18km/hでの数値で、12km/hでは1.4%、10km/hでは0.9%まで下がります。個人差も大きく、Knopp らの検証では効率が悪化した人もいました。まず練習で自分の反応を確かめてください。
ランニングウォッチを持っていなくても効率は改善できますか?
できます。数値が見えると進み方が分かりやすくなるだけで、改善そのものに機器は必須ではありません。同じコースを同じ心拍で走ったときのタイムを記録していけば、向きは確認できます。
フォームを直すのは無駄ということですか?
無駄ではありません。フォームは言葉にすれば記録でき、練習の中で調整できます。感覚のままでは翌日の自分に再現できないので、目線や腕の位置のように言葉へ分解して、一度にひとつずつ変えるのが確実です。
ランニングエコノミーと最大酸素摂取量は、どちらを優先すべきですか?
両方とも持久系の成績に関わりますが、伸びる速さが違います。最大酸素摂取量は上げるのに時間がかかる一方、効率のほうにはシューズ選びのように早く動く部分があります。大会が近いなら効率側、まだ時間があるなら両方に取り組むのが現実的です。
ゆっくりジョグ中心でも効率は上がりますか?
上がります。ただしシューズによる恩恵は速度が落ちるほど小さくなるため、道具に期待できる幅は狭くなります。その分、動作の言語化と記録のほうが効いてきます。
まとめ──燃費を測って、確かめながら上げる
「昨日の我に今日は勝つべし」という言葉がある。競技を続けている人の多くは、この気持ちで辛い練習を越えている。問われるのは、その努力をどこへ向けるかだ。
ランニングエコノミーは、同じ距離を走るのに使う酸素の量で表される走りの燃費だ。数値が小さいほど良く、比べる相手は他人ではなく過去の自分になる。対応機器があればウォッチで測れるし、なくても同じコースを同じ心拍で走ったときのタイムで向きは分かる。
シューズの効率改善は14〜18km/hで約4%と報告されているが、ゆっくり走れば1%前後まで下がり、人によっては悪化する。数字の裏にある条件まで見て、自分がどのケースかを確かめてほしい。そもそも道具を何を基準に選ぶかという考え方は、上達の順番を間違えると遠回りになる?で詳しく書いている。
フォームは言葉にすれば変えられるし、筋トレはやり方しだいで小さな改善が確かめられている。どれを試すにしても、進め方は同じだ。ひとつ変えて、測って、過去の自分と比べる。走りの燃費は、その繰り返しで上がっていく。
私は道具から入る派だ。自分で動かせる幅がいちばん大きくて、しかも明日も同じ状態を作れるからだ。あなたが走りを変えたいと思ったとき、最初に手をつけるのは ①道具や設定を見直す / ②走り方そのものを直す?
※あくまで個人の考え方です。
戦う君は、ひとりじゃない。
アスリートRPG。
📚 関連記事
参考文献・出典
- Mechanisms, Economy, and Performance of Advanced Footwear Technology in Endurance Running — A Review. PMC12821614(Hoogkamer et al. / Barnes & Kilding / Joubert et al. / Knopp et al. の報告を統合)
- Effect of Strength Training Programs in Middle- and Long-Distance Runners’ Economy at Different Running Speeds: Llanos-Lagos C, Ramirez-Campillo R, Moran J, Sáez de Villarreal E. A Systematic Review with Meta-analysis. Sports Medicine (2024). Springer
- Garmin Forerunner 970 Owner’s Manual — Running Economy. Garmin 公式マニュアル
この記事の用語
本文の点線つきの語をタップすると、同じ説明がその場に出ます。
- ランニングエコノミー(Running Economy)
-
同じ距離を走るのに体がどれだけ酸素を使うかを表す数値。数値が小さいほど、少ない酸素で同じ距離を進めていることになる。
この記事では、シューズ・フォーム・筋トレがこの数値をどれだけ動かすかを、条件つきで見ていく中心の語として出てくる。
- 最大酸素摂取量(VO2max)
-
体が一度に取り込める酸素の量の上限を示す数値。ランニングエコノミーが酸素の使い方の効率を測るのに対し、こちらは酸素を取り込む力そのものを表す。
この記事では、車の排気量に例えられ、上げるのに時間がかかる指標として、燃費側のランニングエコノミーと対比される。
- HRM 600
-
接地時の速度低下を測れる対応機器の一例。このデータが、ランニングエコノミーの算出に使われる心拍センサー。
この記事では、正しく測るための条件のひとつ(対応機器の装着)として挙がる。持っていなくても、同じ心拍でのタイム記録で代わりに向きを確認できる。
- ランニングダイナミクス(Running Dynamics)
-
接地時間や上下動など、走っている間の体の動き方を数値化したデータ。対応機器を着けたランニングウォッチが取得する。
この記事では、ランニングエコノミーの算出に使われるデータのひとつとして登場する。
- サブマックス負荷(Submaximal Load)
-
最大挙上重量より軽い負荷で行うトレーニングの負荷設定。筋力トレーニングの研究で、負荷の大きさ別に効果を分けて検証するときに使われる区分。
この記事では、この負荷だけでは効率の改善が確認されなかった、という条件つきの結果の中で登場する。
- 等尺性(Isometric)
-
関節を動かさずに力を入れ続けるトレーニング方法。動きを伴う負荷と分けて、効率への効果が研究で比較されている区分のひとつ。
この記事では、サブマックス負荷と並んで、これだけでは改善が確認されなかった方法として登場する。
- プライオメトリクス(Plyometrics)
-
跳ぶ・跳ね返るような動きを使ったトレーニング方法。着地の衝撃をすばやく力に変える動きが特徴。
この記事では、12km/h以下の速度域で小さな改善が見られた方法として登場する。
- メタ分析(Meta-analysis)
-
複数の研究結果を統計的にまとめ、全体としての傾向を導き出す研究手法。個々の研究より大きな人数のデータで判断できる。
この記事では、筋力トレーニングの効果を方法別に整理したSports Medicine誌の研究として登場する。


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