ランニング前のウォーミングアップ、何を何分?ステップ1はジョグ、ステップ2は動きのある体操、ステップ3は流し カラダ
AI協業 本記事は覆面アスリート本人の体験・意見・判断をベースに、AIアシスタント(Claude)の支援を受けて構成・編集しています。
覆面アスリートがお辞儀をしているイラスト
10秒でわかるこの記事の内容

ランニング前のウォーミングアップは、ゆっくりのジョグ、動きのある体操、短い流しの3つを順に行う形にまとめました。時間は研究で使われた15分前後を出発点に、体が温まって息が少し弾むまでを目安にし、できるだけ走り出す近くで終えます。寒い日の待ち時間に体を冷やさない方法も分かります。

本記事で得られること

  • 今日の練習とレースの距離に合わせて、ウォーミングアップの中身を自分で決められる
  • 本番の前に疲れすぎない強さの目安が分かり、やりすぎの不安が減る
  • 寒い日のスタート待ちで冷えた時に、やることに迷わなくなる

こんな方におすすめ

  • ペース走やレースの走り出しで力を出したいランナー
  • 長くやると疲れそうで、アップを短く済ませているランナー
  • 冬のレースや朝練で、走り出しまでの冷えが気になるランナー
ゆっきーがウォーミングアップについて質問する
ゆっきー

冬の市民レースに出ます。寒い日は走り出しが重いので、スタートまでに何をどれくらいやればいいか迷っています。

覆面アスリートが共感の笑顔
覆面アスリート

寒い日の重さは、ウォーミングアップの中身と終える時刻で変えられるかもしれません。順に確かめましょう。

ゆっきーが心配顔で突っ込む
ゆっきー

長くやると、本番の前に疲れませんか?レースの日はスタートの何分前に終えればいいのかも気になります。

覆面アスリートが本文へ誘導
覆面アスリート

疲れすぎない強さの目安は、息が少し弾むくらいです。レースの日は、整列の締切時刻から逆算して終える時刻を決めます。

ランニング前のウォーミングアップは、ジョグ・動きのある体操・流しの3つを順に行う

ランニング前のウォーミングアップは、ゆっくりのジョグで心拍と呼吸を上げ、動きのある体操で脚を動かし、短い流しで速い動きに慣らす3つのステップを、この順に行います。

Q走る前は、何をどの順番でやればいいですか?Aジョグ、動きのある体操、流しの順に行います。長寿科学振興財団の解説は、軽い全身運動、動きのあるストレッチ、本番に近い動きを組み合わせ、軽い運動から心拍数と呼吸数を本番に近づけるとしています(健康長寿ネット)。解説が例として示す順番をもとに、この記事では走り出すまでの順に3つへまとめました。

3つのステップの役割 どのステップが、体の何を準備するか ステップ1 ゆっくりのジョグ 全身を動かして 温める ステップ2 動きのある体操 関節と筋肉を 動かす ステップ3 流し 速い動きを 体に入れる 本番 軽い運動 本番に近い動き 段の幅と高さは分数や強さの数値ではありません(模式図) 出典: 軽い運動から本番に近づける考え方=健康長寿ネット / 3つのステップの順番と役割=この記事の整理 アスリートRPG │ marin-oceanlife.com 3つのステップの役割 どのステップが、体の何を準備するか ステップ1 ゆっくりのジョグ 全身を動かして温める ステップ2 動きのある体操 関節と筋肉を動かす ステップ3 流し 速い動きを体に入れる 本番 本番に近い動き 軽い運動 段の幅は分数や強さの数値ではありません(模式図) 出典: 軽い運動から本番に近づける考え方=健康長寿ネット 3つのステップの順番と役割=この記事の整理 アスリートRPG

ステップ1: ゆっくりのジョグで、心拍と呼吸を少しずつ上げる

最初のジョグは、息が少し弾むまでゆっくり走ります。中距離ランナーの研究では10分のジョグを使っていました(Keesling 2022)。

ステップ2: 動きのある体操で、脚の筋肉と関節を順に動かす

ジョグの後は、動きのある体操で脚を動かします。種目を決められない時は、若い女子サッカー選手の準備運動にある、ゆっくり走りながら片脚ずつ股関節を外に回す動きと内に回す動きから始めましょう(Soligard 2008)。

回数は、ランナーの研究の条件を参考にします。トレーニングを積んだ男性ランナー7人が、脚の5つの筋肉のまとまりを各10回ずつ1セット、できるだけ速く動かす動的ストレッチを行うと、行わなかった時より、3000〜5000mのレースに近い速さで長く走れました(928.6秒と785.3秒)[4]。この記事では、この回数を参考に、股関節の動きを左右それぞれ10回にします。

男性ランナー14人が15分の動的ストレッチを行った研究では、30分で走れた距離は座って休んだ時と差がなく、走る時の消費エネルギーは増えていました[5]。体操は短く済ませて、次のステップへ進みましょう。

ステップ3: 流しは短い距離を数本走る

流しは全力では走らず、本番で走る速さまで少しずつ上げて、短い距離を数本だけ走ります。研究で使われた例は、50mを6本[6]や、40〜60mを4本です[2]。

静的ストレッチは1か所30秒未満にして、後に動きのある体操を入れる

静的ストレッチを使いたい時は、体が温まった後に、1か所30秒未満で行います[1]。1か所30秒未満なら最大の力はほぼ落ちず(−1.1%)、60秒以上になると落ちやすくなります[7]。ストレッチの後に動きのある運動を入れた研究では、成績への明確な影響は見られませんでした[8]。どの場面でどのストレッチを使うかは、静的ストレッチと動的ストレッチの使い分けの記事にまとめています。

迷った時は、ゆっくりのジョグ、ゆっくり走りながら股関節を外と内に回す動きを左右10回ずつ、40〜60mの流し4本の順に行いましょう。回数と本数は、研究の条件を参考にしたこの記事の組み合わせです。

メニューが分かると、次に気になるのは、全部で何分かかるのかです。

ウォーミングアップの時間は、研究で使われた15分前後を出発点に、体の感覚で調整する

ウォーミングアップの時間は、研究で使われた例ではジョグが10分、アップ全体が15分のものが複数あります。推奨値ではないので、この長さを出発点にして、体が温まって息が少し弾むまでを目安に、今日の練習の強さで調整します。

Qウォーミングアップは何分やればいいですか?A研究で使われた15分前後を出発点に、体が温まって息が少し弾むまでを目安にします。15分のアップは複数の研究で使われた長さです(Takizawa 2018)(Spitz 2014)。この記事では、15分のうちジョグの後の時間を体操と流しに回す形を勧めます。

今日の練習は? あなたがやること どこまで続ける?
ゆっくり走る日走り始めをゆっくりにするジョグの続きで、普段の速さまで少しずつ上げる
ペース走やスピード練習の日3つのステップを順に行う体が温まり、息が少し弾むまで
レースの日3つのステップを順に行う整列の時刻から逆算して終える時刻を決める
時間が無い日ジョグを短くし、体操は股関節の動きだけにして、流しの本数を減らす順番は変えずに、走り出す

研究の数字が付いていない手順は、軽い運動から本番に近づける考え方(健康長寿ネット)をもとにしたこの記事の提案です。

今日の練習の速さを先に決めれば、走り始めをゆっくりにする日か、3つのステップを順に行う日かが決まります。

長さを決める時に心配なのが、本番の前に疲れてしまわないかです。

ウォーミングアップで疲れる時は、長さと強さが行き過ぎているかもしれない

ウォーミングアップで疲れる時は、長く強く走りすぎているのかもしれません。アップを終えた時に脚に疲れが残る日は、次回の時間か本数を減らしてみましょう。

Qウォーミングアップをすると、本番の前に疲れませんか?A疲れが残る日は、次回の時間か本数を減らします。競技全般の32研究のまとめでは、アップが成績を下げることはまれとされています(Fradkin 2010)。よく管理されたランダム化比較試験は少ないとされています。

アップの強さは軽くしすぎない

アップの後に20分休んでから1600mを走った研究では、中くらいの強さのアップが6分12秒で、軽いアップの6分30秒より速く、強いアップの6分18秒はその間でした(Paris 2021)。20分休んだ時の結果で、すぐ走り出す場合は調べられていません。この記事では、息が少し弾むくらいを目安にします。

自転車の短距離選手では、短く軽いアップの方がピークパワーが高かった

自転車の短距離選手の研究では、合計50分以上でスプリント4本の従来のアップより、15分でスプリント1本の短く軽いアップの方が、30秒全力のピークパワーが高くなりました(1,390Wと1,303W)(Tomaras 2011)。比べたのはアップ全体の長さと強さで、本数だけの効果ではありません。自転車の結果なのでランナーへそのまま当てはめず、脚に疲れが残る日に時間と本数を減らす判断の材料にしましょう。

暑い日は、20分のアップで走れる時間が短くなった研究がある

30〜32℃の環境で20分のアップをすると、アップをしない時より走れた時間が短くなりました(約26.9分と約30.3分・男性20人)[14]。短いアップと比べた研究ではないので、暑い日はアップを増やさないことから始めましょう。

疲れが心配な日は、アップを軽くする前に、時間と本数から調整してみましょう。

普段の練習の組み立てが分かったら、次はレースの日に何を変えるかです。

レースの日のウォーミングアップは、10km以上なら3つのステップのまま行い、5000mまでは強い走りも選べる

レースの日のウォーミングアップは、距離で分けて考えます。800mと5000mでは強い走りを入れたアップの方が速かった小さな研究があり、10kmからマラソンでは同じ研究が見当たらないので、この記事では3つのステップのまま行います。

Qレースの日のアップは、練習の日と何を変えればいいですか?A10km以上は練習の日と同じ3つのステップのままにし、5000mまでなら強い走りを入れる方法も選べます。いつもの手順なら当日に迷わず、試していない強い走りを足さずに済みます。10kmからマラソンのレースで強いアップやレースペースの走りが記録を上げた研究は、この記事で調べた文献にはありません。

800mと5000mでは、強い走りを入れた方が速かった研究がある

800mのレースでは、50mの流し6本を、流し2本とレースペースの200m 1本に変えると、タイムが約1.2秒速くなりました(124.5秒と125.7秒・中距離ランナー11人)(Ingham 2013)。5000mのレースでは、250mを3本軽く走るより強く走るアップの方が、約6秒速くなりました(1141.4秒と1147.8秒・男性ランナー13人)(Alves 2023)。流しや短い疾走の量を増やすほど800mが速くなった研究もありますが、アップなしとの比較がない13人の小さな試験です(Keesling 2022)。強い走りを入れる時は、練習の日に一度試してから使いましょう。

10km以上のレースの日は、この記事では強い走りを足しません。当日に決めるのは、終える時刻から逆算した段取りです。

レースのアップが決まると、次に迷うのは、スタートの何分前に終えるかと、整列の間に冷えた時の対処です。

ウォーミングアップはできるだけ走り出す近くで終え、寒い日ほど間を空けない

ウォーミングアップは、できるだけ走り出す近くで終えます。選手はアップを終えてから本番まで10〜30分待つことが多いとされるので(Cowper 2022)、レースの日は待ち時間から逆算して終える時刻を決め、寒い日ほど間を空けないようにします。

Q1ウォーミングアップは、スタートの何分前に終えればいいですか?A決まった分数はなく、整列の締切時刻から逆算して、できるだけスタートの近くで終えます。アップの後の時間が長いと、体と筋肉の温度が下がることがあるからです[16]。気温5℃で30分待つと、24℃で5分待つ時より、ランナーとボート選手計10人のタイムトライアルが遅くなった研究もあります(Spitz 2014)。

Q2スタートを待つ間に冷えたら、どうすればいいですか?A上着で体を冷やさないようにして、走り出す前にもう一度軽く動きます。

アップを終えてからスタートまでの間 寒い日ほど、この間を空けないようにします この間が長いと、体と筋肉の温度が下がることがある 3つのステップ アップ 待ち時間 アップを終える 荷物を預ける 整列の前に 短い流し 整列の締切時刻 スタート 待ち時間が長い日は 上着(荷物に入れず整列の場所まで着ていける) 足踏み(整列の中で) 決まった分数はなく、間隔は時間の長さを表しません(模式図) 出典: Cowper 2022(体と筋肉の温度) アスリートRPG │ marin-oceanlife.com アップを終えてからスタートまでの間 寒い日ほど、この間を空けないようにします アップ 3つのステップ アップを終える この間が長いと、体と 筋肉の温度が下がる ことがある 荷物を預ける 上着は荷物に入れない 待ち時間が長い日に着る 整列の前に短い流し 整列の締切時刻 待ち時間 スタート 上着 足踏み 決まった分数はなく、間隔は時間の長さを表しません(模式図) 出典: Cowper 2022(体と筋肉の温度) アスリートRPG

普段の練習は、ウォーミングアップからそのまま走り出す

ペース走やスピード練習の日は、3つのステップからそのまま本番に入ります。アップの後に着替えや移動で長く止まらないように、走る場所で行いましょう。信号待ちで止まった時は、足踏みで体を動かします。

レースは、整列や待ち時間から逆算してウォーミングアップを終える時刻を決める

レースの日は、スタート時刻ではなく、整列の締切時刻から逆算します。整列の締切時刻を大会の案内で確かめ、荷物を預ける時刻を決め、その前にアップを終える順に組み立てます。終える時刻は、整列の締切時刻から、荷物を預ける時間と整列前の流しの時間を引いた時刻です。始める時刻は、そこからアップ全体の長さを引いた時刻です。例えば、整列の締切が9時50分で、荷物を預ける時間と整列前の流しの時間を合わせて20分と見込むなら、9時30分に終え、全体15分のアップは9時15分に始めます。時刻は大会の案内に合わせて置き換えてください。

待ち時間が長い日は上着を着て、走り出す前にもう一度軽く動く

上着、短い流し、足踏みの組み合わせはこの記事の提案で、もう一度動く意味を示したサッカーの研究があります。ハーフタイムの間に筋肉の温度が39.4℃から37.4℃へ下がり、何もしない選手は後半開始時のスプリントが2.4%落ちましたが、軽い運動をもう一度行った選手は落ちませんでした(Mohr 2004)。

上着の効果は、測る項目で分かれます。7研究・85人のまとめでは、アップの後に上着や加温ウェアを着ると、短い全力の力は上がりましたが、タイムを測る種目(ボート、反復スプリント、水泳)では全体としてはっきりした差が出ませんでした[16]。荷物に入れず整列の場所まで着ていける上着を用意して、整列の前に第1章より本数を減らした流しを入れ、整列の中では足踏みで体を動かしましょう。整列の場所で脱いだ上着の扱いは、大会の案内で確かめてください。

寒い朝の走り出しが重い日は、分数を増やさず、家の中で動き始めて間を空けない

寒い日も、分数を決めて長くする必要はありません。0℃の環境で25分のアップをした時より、アップをしなかった時の方が、強い運動を長く続けられた研究があるためです(女性の自転車選手など7人・小さな差)[18]。この研究は、アップをやめる理由ではなく、長くしない理由として読みます。全体15分ほどを出発点にして、家の中で足踏みのような軽い動きから始めてから外に出て、ジョグへつなぎます。家の中の動きも全体の時間に含めます。外に出たら、走り出すまでの間を空けないようにします。指先の冷えが気になる日は、冬のランニンググローブの選び方も参考にしてください。

終えてから走り出すまでの間を詰めると、温めた体のまま走り出せます。寒い朝の走り出しが重い時は、アップの時間を増やす前に、間が空いていないか確かめましょう。

では、なぜこの手順で走りやすくなるのでしょうか。

ランニング前のウォーミングアップの目的は、筋肉を温めて関節を動かし、スタートから力を出すことにある

ウォーミングアップの目的は、体を温める、関節の動く範囲を広げる、筋肉を動きやすくする、神経の準備をする、スタートから力を出す、の5つです。筋肉の温度が1℃上がると短時間の力は2〜5%上がるので(Racinais 2010)、中心は筋肉を温めることです。

Qなぜウォーミングアップをすると走りやすくなるのですか?A筋肉が温まり、力を速く出しやすくなるからと考えられています。アップの効果の多くは、温度に関わる仕組みで説明されています(Bishop 2003)。

筋肉を温めると、力が出やすくなり、筋肉も神経も動きやすくなる

ステップ1のジョグで体を温めると、短時間の運動で出せる力が上がります[19]。大学生の男性11人が室温10℃で15分の自転車こぎのアップをした研究では、太ももの外側の筋肉の温度が33.6℃から、中くらいの強さで36.4℃、強めで37.5℃まで上がりました(Chiba 2022)。

筋肉が温まると硬さが下がり、速い動きでも力を出しやすくなります。神経の伝わる速さも上がるとされています[20]。強い動きを短く入れると、その後に力が出やすくなることもあります。62研究・1,039人のまとめでは、この効果は小さく、研究によって結果が分かれました[22]。流しに同じ効果があるかは調べられていません。体の深い部分の温度が上がりすぎると成績は下がるので、暑い日は温めすぎないようにします[19]。

動きのある体操で、関節の動く範囲を広げる

ステップ2の体操を行うと、筋肉と腱の硬さが下がり、関節の動く範囲が広がります[23]。直後の改善は小さいとする解析もありますが[24]、走る前に脚を大きく動かしておく準備になります。

ストレッチ以外の運動を含むアップは、調べた評価項目のおよそ8割で成績を上げた

競技全般のまとめでは、ストレッチ以外の運動を含むアップは、調べた評価項目のおよそ8割で成績を上げていました[11]。よく管理されたランダム化比較試験は少ないとされていますが、走り始めから力を出すための準備として続ける理由になります。

時間が無い日にジョグを短くしても外さないのは、筋肉を温めることが中心だからです。

目的が分かると、次に思うのは、面倒な日に省いたらどれくらい損をするのかです。

ウォーミングアップをしない影響は、短い時間の力に出やすいと考えられ、持久走では研究が分かれる

ウォーミングアップをしない影響は、スピード練習の速い区間やレースのスタートのように、短い時間に力を出す場面ほど大きいと考えられます。筋肉の温度が低いまま始まり、短い時間に出せる力が落ちるからです(Racinais 2010)。

Q面倒な日は、ウォーミングアップを省いてもいいですか?Aゆっくり走る日は走り始めをゆっくりにし、ペース走やレースの日は短くしても順番を残しましょう。ゆっくり走る日は、別にアップの時間を取らなくても、ジョグがそのままアップになります。時間が無い日は、第2章の表のとおり、各ステップを短くします。

持久走では、アップで差が出なかった研究と、動的ストレッチで差が出た研究がある

3000〜5000mに近い速さの持久走では、結果が分かれています。男子大学生7人が15分のアップをしてもしなくても、走り続けられた時間に差がなかった研究があります(Takizawa 2018)。一方で、動的ストレッチをすると長く走れた研究もあります(Yamaguchi 2015)。どちらも7人の小さな研究です。差が出なかった研究でも走れる時間は短くならず、長く走れた研究もあるので、ペース走やレースの日は順番を残す形を選びましょう。

ウォーミングアップで怪我が減るかは、ランナーではまだ確かめられていない

市民ランナーにアップ、クールダウン、ストレッチを指導した16週間のランダム化比較試験では、1,000時間あたりの怪我は指導した群が5.5件、しなかった群が4.9件で、減りませんでした[25]。ランナーに限ってアップで怪我が減ったという結果は、この記事で調べた文献にはありません。1993年の男性だけの試験で、指導を受けた人が実際にどこまで行ったかは本人の記録に頼っています。

サッカーでは、FIFA 11+という準備運動で怪我が30〜39%減ったという解析があります[26][27]。内容は筋力とバランスの練習を含むもので、体を温めるだけのアップとは別物です。いろいろな競技の解析では、筋力トレーニングは怪我を3分の1未満に減らし、ストレッチでは減りませんでした[28]。ランナーに限った解析(9試験・1,904人)では、運動プログラム全体で怪我は減らず、指導者のもとで行った試験を後から分けた解析では減っていましたが、質の低い研究が多い解析です[29]。怪我を防ぐ方法の全体像は怪我しにくい体の作り方の記事にまとめています。

アップは怪我を防ぐためというより、その日の走りで力を出すために行うと考えると、続ける理由がはっきりします。

最後に、寒い日に体がおかしいと感じた時の判断を確かめておきましょう。

寒い空気で息苦しい時や痛みが続く時は、走るのをやめて受診を考える

寒い空気の中で息苦しさや胸の締めつけが出る時は、走るのをやめて、受診を考えましょう。米国胸部学会の資料は、寒い環境で運動による喘息の症状が出ることがあるとしています。

Q冬に走ると咳が出て息苦しいのは、アップ不足ですか?Aアップ不足とは限らないので、繰り返す時は受診します。せき、ゼーゼーする音、息切れ、胸痛、胸の圧迫感は、運動で喘息の症状が出る時にみられます(米国胸部学会)。喘息と診断されていない人にも、運動で気道が狭くなることがあります(Parsons 2013)。

胸の痛みや圧迫感は喘息以外の原因もあるので、初めて出た時や強い時は、繰り返すのを待たずに受診してください。症状は運動を始めて5〜10分後から出ることがあり、悪化する時や頻繁に出る時も受診の目安です。唇や指が青くなる、話しにくいといった時は救急を受診します(Cedars-Sinai)。米国胸部学会の資料は、寒さが誘因と分かっている人に、スカーフやマスクで空気を温める方法と、鼻で呼吸する方法を挙げています[30]。同じ資料は、喘息のある人向けに運動前の5〜10分の準備運動を勧めています[30]。運動の計画は、受診の時にかかりつけ医に確かめてください。

走り出しの脚の痛みが続く時も、アップで解決しようとせず、走る量を落として受診を考えましょう。膝の痛みは痛む場所ごとの見分け方、ふくらはぎの張りは危険な張りの見分け方にまとめています。

息苦しさや胸の症状が繰り返す時は、ウォーミングアップで様子を見ず、受診を優先してください。

ウォーミングアップのよくある質問

Q1. ウォーミングアップの心拍数の目安はありますか?
心拍数の数値より、息が少し弾むかどうかを目安にしましょう。軽い運動から始めて、心拍数と呼吸数を本番の運動に少しずつ近づけるのが基本です(健康長寿ネット)。走る強さと心拍の関係はゾーン2の記事を見てください。

Q2. 走る前にフォームローラーを使うと良いですか?
走る前のフォームローラーは、スプリントが0.7%、柔軟性が4.0%と小さく上がった解析があります(Wiewelhove 2019)。怪我の予防は調べられていないので、使うなら3つのステップに足す形にします。使い方はフォームローラーの記事を見てください。

Q3. 走る前にマッサージガンを使うと良いですか?
走る前のマッサージガンは、柔軟性は上がっても、筋力や瞬発力は上がらない、または下がるという報告があり、著者は筋力や瞬発力を使う運動での使用を勧めていません(Ferreira 2023)。11研究のまとめで、ランナーの怪我は調べられていません。回復に使う話はマッサージガンの記事にまとめています。

Q4. 冬は怪我をしやすいですか?
陸上の国際大会では、体感温度が低いほど筋肉の怪我が多いという関連が報告されています[35]。全ての怪我を合わせると関連は出ていません。著者らの要約では、体感温度が10℃下がるごとに筋肉の怪我のリスクが30〜40%上がりました[36]。関連が出たのは短距離、ハードル、投てきで、論文の要旨と著者の要約では長距離やマラソンでの関連は報告されていません。市民ランナーの練習に同じことが言えるかは確かめられていません。体を冷やさない手順は本文のとおりです。

まとめ

この記事で押さえたこと

  • ランニング前のウォーミングアップは、ゆっくりのジョグ、動きのある体操、短い流しの3つを順に行う
  • 時間は研究で使われた15分前後を出発点に、体が温まって息が少し弾むまでを目安にする
  • アップで疲れる時は長さと強さを見直し、ジョグは息が少し弾むくらいを目安にする
  • 10km以上のレースは3つのステップのまま行い、5000mまでは強い走りを入れる方法も選べる
  • ウォーミングアップはできるだけ走り出す近くで終え、スタートを待つ時は上着を着て、もう一度軽く動く
  • アップで怪我が減るかはランナーでは確かめられていないので、走り始めから力を出すために行う
  • 寒い空気で息苦しい時や痛みが続く時は、走るのをやめて受診を考える

走り出しが重い時は、3つのステップの順番と、終えてから走り出すまでの間を見直してみてください。

覆面アスリートが体験を話す
覆面アスリート

寒い時期の大会や練習では、太ももやふくらはぎがよく攣りました。攣った状態を放っておくと、翌日以降も肉離れのような痛みが残ることがありました。

あくまで個人の経験であり、万人に当てはまるものではありません。攣りとウォーミングアップの関係は、この記事では調べていません。攣りについては足がつる時の記事にまとめています。

覆面アスリートが読者に問いかける
覆面アスリート

私は、寒い日は外に出る前からできるだけ冷やしたくない派です。
あなたは ①家の中で動き始める派 / ②外に出てから動き始める派、どっちですか。
コメントで教えてください。

戦う君は、ひとりじゃない。アスリートRPG。

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参考文献・出典

出典リスト(36件)— タップで表示
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本記事はウォーミングアップについての一般的な情報で、診断や治療の代わりにはなりません。息苦しさや胸の症状、痛みが続く時は、医療機関を受診してください。

この記事の用語

本文の点線つきの語をタップすると、同じ説明がその場に出ます。

流し(ウィンドスプリント)

短い距離を速めに数本走る練習。

この記事では、ウォーミングアップの3つ目のステップとして出てきます。

動的ストレッチ

関節を動かしながら筋肉を伸ばす体操。

この記事では「動きのある体操」と呼んでいます。

静的ストレッチ

反動をつけず、同じ姿勢で筋肉を伸ばしたまま止めるストレッチ。

筋肉の温度(筋温)

筋肉の中の温度。体を動かすと上がり、止まると下がる。

この記事では、走り出す時に保ちたいものとして出てきます。

タイムトライアル

決めた距離を、できるだけ速く走ってタイムを測ること。

ピークパワー

短い全力の運動の中で出せた力の最大値。

ランダム化比較試験(randomized controlled trial)

参加者をくじ引きのような方法で2つ以上の群に分け、方法の違いで結果がどう変わるかを比べる研究。

FIFA 11+(ファイファ イレブンプラス)

国際サッカー連盟の医学部門が関わって作られた、サッカーの準備運動。ランニング、筋力、バランスの練習を含む。

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