耐乳酸トレーニングで鍛えるのは、30秒〜4分の全力を終盤まで保つ力。研究で効果が出た期間は3〜9週間 カラダ
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覆面アスリートがお辞儀をしているイラスト
10秒でわかるこの記事の内容

400m・800m走やサッカーの後半など、全力が30秒〜4分続く場面で終盤にペースが落ちる方へ。耐乳酸トレーニングは筋肉のイオンの処理と関係し、少人数の研究で3〜7週間後に反復ダッシュや1500m走のタイムが縮みました。

✅ 本記事で得られること

  • 乳酸に耐える根性練習から、全力の秒数・本数・休息に狙いを持った練習へ切り替えられる
  • 全力が60秒に満たない競技なら、その長さでは効果が確認されていないβ-アラニンにお金を払わずに済む
  • 研究で使われた秒数・本数・休息から、自分の競技に近い練習の形を選べる

👤 こんな方におすすめ

  • 400m〜1500m走で、レースの終盤にペースが落ちる人
  • サッカーや球技で、後半になるとダッシュの切れが落ちる人
  • 部活や指導者から「耐乳酸を入れよう」と言われ、メニューを探している人
ゆっきーが疑問を持って質問する
ゆっきー

ラクロスの試合後半になると、ダッシュで走り負けて足が止まります。耐乳酸トレーニングって、乳酸に慣れる練習なんですか?

覆面アスリートが共感の笑顔
覆面アスリート

後半のあの重さはつらいですよね。耐乳酸トレーニングが合うかは、1本の全力が何秒続くかで変わります。ゆっきーの全力は、どのくらい続きますか?

ゆっきーが心配顔で突っ込む
ゆっきー

1本は短いダッシュで、それを試合の間ずっと繰り返します。短いダッシュでも当てはまりますか?

覆面アスリートが本文へ誘導
覆面アスリート

短いダッシュの繰り返しにも、研究で使われた形があります。全力の秒数・本数・休息を、競技ごとに並べました。

耐乳酸トレーニングで鍛えるのは、30秒〜4分の全力を最後まで保つ力

結論 · 数値で見る2026.10 更新 · Iaia and Bangsbo 2010

耐乳酸トレーニングは何を鍛える練習か?

耐乳酸トレーニングは、ほぼ全力の短い運動を、休息を挟んで繰り返す練習です。研究では、鍛えた選手の30秒〜4分の全力の成績が改善したと報告されています。

改善が報告された全力の長さ
30秒〜4分
鍛えた選手の研究のまとめ
筋肉のイオンが大きく乱れる運動
0.5〜6分
Hostrup 2017
練習の中身
ほぼ全力の反復
本数と休息で組む
Iaia FM, Bangsbo J (2010) Scand J Med Sci Sports

耐乳酸トレーニングで鍛えるのは、30秒〜4分続く全力を、終盤まで落とさずに保つ力です。

「耐乳酸」と呼ばれる練習は、ほぼ全力の短い運動を、休息を挟んで何本も繰り返す形をとります。

耐乳酸と呼ばれる練習に近い形で研究されているのが、スピード持久トレーニング

スピード持久トレーニングは、英語の論文で speed endurance training と呼ばれる練習の訳語です。

デンマークのコペンハーゲン大学の研究グループは、鍛えた選手を対象にした研究をまとめ、スピード持久トレーニングが30秒〜4分の高強度の運動と、高強度の反復を改善すると報告しました(Iaia & Bangsbo 2010)。

同じグループの後の総説は、0.5〜6分の激しい運動で筋肉の中のイオンが大きく乱れることを、スピード持久トレーニングの狙いとしてまとめています(Hostrup & Bangsbo 2017)。

耐乳酸トレーニングが合うかどうかは、自分の全力が何秒続くかで決まる

同じ「終盤がきつい」でも、全力が10秒で終わる競技と4分続く競技では、筋肉の中で起きていることが違います。下の表は、全力の長さごとに、耐乳酸トレーニングとβ-アラニンの研究結果を並べたものです。

あなたの全力は
どのくらい続く?
耐乳酸トレーニングは
役に立つ?
β-アラニンは
役に立つ?
30秒未満
100m走・1回の挙上など
研究の中心(30秒〜4分)より短い。6秒の全力を繰り返した群は、短いダッシュの方が伸びた 効果は支持されていない。60秒未満の運動では差が出なかった
30秒〜4分
400m・800m走、100〜200m泳など
研究の中心にあたる長さ。ただし競泳では、タイムが縮んだことを確かめた研究がまだ少ない 1分を超える部分は、効果の報告がある。30〜60秒の部分は確認されていない
短いダッシュの反復
サッカー・球技の後半
20秒の全力を休息2分で繰り返した群で、反復ダッシュの合計タイムが縮んだ 効果なし。反復ダッシュの能力は変わらなかった
4分を超える持久
長距離走・ロードレース
練習量を減らして30秒走を入れても、10km走のタイムが保たれた・縮んだ例がある 効果の報告は1〜4分の運動が中心。レース全体への効果は、この記事の根拠では言えない

表の根拠は参考文献の[3][4][5][6][7][9][17]です。

10秒以下の短いダッシュを繰り返す練習は、40歳以下の活動的な成人と選手の18研究をまとめた解析では、無酸素性の運動の成績に、通常の高強度インターバルや持続走との差がありませんでした(Boullosa 2022)。

耐乳酸トレーニングが一番当てはまるのは、全力が30秒〜4分続く競技です。全力が60秒に満たない競技や、短いダッシュを繰り返す競技では、耐乳酸トレーニングとβ-アラニンで研究の結果が分かれます。まず自分の全力の長さを、表の左の列で確かめてください。

では、30秒〜4分の全力の終盤に、筋肉の中では何が起きているのか。

終盤に脚が止まる有力な説明は、筋肉の中でカリウムや酸など複数のイオンが同時に乱れること

結論 · 要点2026.10 更新 · Hostrup and Bangsbo 2017

全力の終盤に脚が止まるのはなぜか?

0.5〜6分の激しい運動では、筋肉の中でカリウム・カルシウム・酸(水素イオン)などのイオンが同時に乱れ、出せる力を落としうると考えられています。乳酸そのものは、エネルギーとして使い直される物質です。

  1. 乳酸:筋肉や心臓でエネルギーとして使い直される
  2. 力が落ちる理由:カリウム・カルシウム・酸(水素イオン)などが同時に乱れるという説明が有力
  3. 練習で伸びるもの:筋肉がイオンを処理する力
Hostrup M, Bangsbo J (2017) J Physiol

全力の終盤に脚が止まる有力な説明は、筋肉の中でカリウムや酸など複数のイオンが同時に乱れ、筋肉が出せる力を落とすことです。

乳酸は、筋肉や心臓でエネルギーとして使い直される物質

乳酸は老廃物ではなく、酸素が足りている時にも常に作られる物質です。細胞の間を行き来する乳酸には、主要なエネルギー源、糖を作り直す材料、体の中の合図の3つの役割があります(Brooks 2018)。

乳酸が酸性化の原因ではないとする総説もありますが[11]、その総説には反論のコメントが4本付いていて、乳酸が失速と全く無関係だとまでは言い切れません。

筋肉の力が落ちる有力な説明は、カリウムや酸(水素イオン)などのイオンが同時に乱れること

30秒〜6分の激しい運動では、筋肉の中でカルシウム・塩素・水素・カリウム・ナトリウムのイオンと乳酸が大きく乱れます。この乱れが筋肉の膜の興奮しやすさや、カルシウムの放出を下げ、筋肉が出せる力を落としうると考えられています[2]。

筋肉の疲労の総説も、「乳酸と酸が筋肉の収縮を妨げる」という従来の説明は哺乳類では重要度がおそらく低いとし、イオンの変化とカルシウムの放出の低下を挙げています(根拠の多くは動物の筋肉の実験)[12]。

疲労感や痛みの感覚も、1つの物質だけでは起きません。健康な人の親指の筋肉に酸・乳酸・ATPを入れた実験では、1種類ずつでは疲労感も痛みも出ず、3つを組み合わせた時だけ疲労感が出て、濃度を上げると痛みが加わりました(Pollak 2014)。運動中の脚の感覚を測ったものではない、10人の小規模な実験です。

耐乳酸トレーニングで伸びるのは、筋肉がイオンを処理する力

鍛えた選手で見られた成績の改善は、最大酸素摂取量の伸びではなく、筋肉の細胞膜でナトリウムとカリウムを出し入れするポンプ(ナトリウム・カリウムポンプ)の増加と関係していました[1]。後の総説は、運動中と回復中のカリウムの乱れが小さくなることや、乳酸と酸を筋肉の外へ運ぶ働きの改善も挙げています[2]。

酸を筋肉の外へ運ぶ働きについては、2010年のまとめは関係しないようだとし、2017年の総説は関係するとしていて、同じグループの中でも説明が分かれています。2017年の総説は、仕組みを調べた研究の多くが鍛えていない人を対象にしていたとも書いています。

活動的な女性16人が2分のインターバルを週3回・8週間行った研究は、練習前に重曹を飲んで酸の蓄積を減らした群と、偽の飲み物を飲んだ群を比べました。筋肉が酸を受け止める力(緩衝能)は19%と9%伸び、群の間に差はありませんでした(Edge 2006・重曹の研究)。一方、乳酸閾値と疲労までの時間は、重曹の群の方がやや大きく伸びています(差は統計の境目)。

耐乳酸トレーニングは、ほぼ全力の強度で反復することで、筋肉がイオンを処理する力を伸ばすと考えられている練習です。終盤の失速と乳酸の関係は、翌日まで脚が動かない理由を整理した記事でも説明しています。

耐乳酸トレーニングで伸ばす力が分かったら、次は研究で実際に使われた練習の形です。

耐乳酸メニューは、研究では20〜30秒前後のほぼ全力を、休息を挟んで繰り返す形が中心

結論 · 数値で見る2026.10 更新 · Iaia 2015 / Bangsbo 2009

耐乳酸メニューは何秒・何本・休息何分で組むか?

研究で使われた耐乳酸メニューは、20〜30秒のほぼ全力を、40秒〜3分の休息を挟んで6〜12本繰り返す形が中心です。

全力の長さ
20〜30秒
サッカー・陸上の研究
休息
40秒〜3分
研究で使われた範囲
研究での週の回数
3〜4回
研究の実施値で上限ではない
Iaia FM ほか (2015) PLoS One / Bangsbo J ほか (2009) J Appl Physiol

耐乳酸メニューは、20〜30秒前後のほぼ全力を、休息を挟んで6〜12本繰り返す形が研究の中心です。ここで挙げる研究は、どれも6〜18人の小規模な研究で、多くはデンマークの同じ研究グループによるものです。

研究で使われた耐乳酸メニューは、主に5つの形

誰が
(人数)
どんな練習を 週の回数
と期間
何が変わった?
若手プロのサッカー選手
(13人)[6]
20秒の全力走を6〜8本。休息2分の群と40秒の群に分けた 週3回・3週間
(試合期の終盤)
休息2分の群は持久力テストが+10.1%、反復ダッシュが2.5%速く。休息40秒の群は200m走が2.1%速く
持久系のランナー
(17人)[9]
練習量を25%減らし、30秒の全力走を6〜12本 週3〜4回・6〜9週間 3km走が10.4分→10.1分、10km走が37.3分→36.3分
中程度に鍛えたランナー
(18人)[16]
ゆっくり30秒→中くらい20秒→ほぼ全力10秒を続ける5分を、休息2分で3〜4本 7週間
(練習量は54%減)
1500m走が21秒、5km走が48秒縮んだ
参加者
(13人)[3]
6秒の全力走の群と、30秒の高強度走の群に分けた 期間は抄録に記載なし 持久力テストの伸びは30秒群が29%、6秒群が10%
自転車をこぐ女性
(16人)[15]
高い強度(全力より下)の2分こぎを6〜10本・休息1分。同じ練習量の持続こぎと比べた 週3回・5週間 酸を受け止める力がインターバル群で+25%、持続群で+2%

サッカーの研究の持久力テストは、往復走と短い休息を繰り返して走れた距離を測るテスト(Yo-Yo間欠性回復力テスト)です。この研究は2つの練習の形を比べたもので、通常の練習だけを続けた群はありません[6]。休息40秒の群の反復ダッシュは、論文の要旨では「ほぼ確実に悪化」、本文の結果では「変化なし」で、20mと40mのダッシュはどちらの群も変わりませんでした。

13人の1本の研究では、休息を2分とった群は反復ダッシュと持久力テストが、40秒の群は200m走が伸びました。持久力テストは両方の群で伸びていて、群の間の差ははっきりしていません。休息の長さの使い分けは、まだ確立した方法ではありません。

陸上は30秒走、サッカーは20秒走、自転車は2〜5分のこぎを繰り返す形が研究で使われた

陸上の研究は持久系のランナーが対象で、30秒の全力走が中心です。持久系のランナー17人の4週間の研究では、9人が週約45kmの練習を30秒のスプリント走8〜12本(間に3分休息)中心に置き換え、8人は通常の練習を続けました(Iaia 2009)。走行距離は大きく減りましたが、10km走のタイムと最大酸素摂取量は変わらず、同じ速さで走る時の酸素の消費は5.7〜7.6%減りました。

サッカーと球技では、上の表の20秒の全力走が当てはまります。反復ダッシュの練習をまとめた総説は、最大酸素摂取量の80〜90%で走る高強度インターバルと、1本ずつの全力ダッシュの両方を入れることを挙げ、一番伸ばす1種類の練習は無いと書いています(Bishop 2011)。

自転車では、上の表の2分のこぎのほかに、鍛えた自転車選手6人が最大パワーの80%で5分こぐのを休息1分で6〜8本、4週間で6回行った研究があります。筋肉が酸を受け止める力は206.6から240.4へ上がり(統計の上でぎりぎりの差)、40kmのタイムトライアルも改善しました(Weston 1997)。この研究には比べる群が無く、練習も全力より少し下の強度です。

競泳の100〜200mは耐乳酸メニューの考え方を参考にできるが、タイムを確かめた研究はまだ少ない

競泳の100〜200mのレースは30秒〜4分に入るので、ほぼ全力・本数・休息の長さという考え方は参考になります。耐乳酸メニューでタイムが縮んだことを確かめた質の高い研究を、この記事の調査では見つけられませんでした。泳ぐ距離と本数までは研究から決められません。

形が決まったら、次に知りたいのは「どのくらいで効果が出るか」と「いつ入れるか」です。

耐乳酸トレーニングの効果は、研究では3〜9週間で出ていて、練習量を減らした期間に入れた例が多い

結論 · 時間軸2026.10 更新 · Iaia 2015 / Bangsbo 2009 / Gunnarsson 2012

耐乳酸トレーニングは何週間で効果が出るか?

耐乳酸トレーニングの効果は、研究では3〜9週間で出ています。サッカー選手は3週間で反復ダッシュが、ランナーは6〜9週間で3km・10km走が改善しました。練習量を減らした期間に入れた研究が多くあります。

Iaia FM ほか (2015) PLoS One / Bangsbo J ほか (2009) J Appl Physiol / Gunnarsson TP, Bangsbo J (2012) J Appl Physiol

耐乳酸トレーニングの効果は、早い研究で3週間、長い研究で9週間で出た

サッカー選手は3週間[6]、ランナーの3km・10km走は6〜9週間で変化が出ました[9]。

この期間は研究がその長さで終わったという意味でもあり、誰でも3週間で変わるとは言えません。

耐乳酸トレーニングを試合期に入れて確かめた研究は、サッカーの例だけ

サッカーの研究をまとめた総説は、最大心拍数の85%を超える高強度の走りと、スピード持久トレーニングの両方を、シーズン中に使える練習として挙げています(Iaia 2009・サッカーの総説)。スピード持久トレーニングでは持久力テストが22〜28%、反復ダッシュが約2%改善しています。前の章のサッカーの研究も、試合期の最後の3週間に練習量を約20%減らして入れた例です[6]。

持久系のランナーの研究では、練習量を大きく減らした期間でも10km走のタイムが保たれ[17]、練習量を25〜54%減らした2つの研究では3km・10km走や1500m・5km走のタイムが縮みました[9][16]。試合前の調整期を調べた研究ではありませんが、練習量を落とす週にも全力の反復を残す選択肢はあります。

耐乳酸トレーニングは、研究では練習を足すのではなく、練習量を減らして置き換える形で入れた例が多くあります。時期について確かめられているのは、サッカーの試合期と、練習量を減らした期間の例だけです。

耐乳酸トレーニングの週の回数は、研究では週3〜4回で、上限を示した研究は無い

研究で使われた週の回数は、サッカーと自転車の研究が週3回[6][15]、持久系のランナーの研究が週3〜4回でした[9]。これは研究で実際に行われた回数で、「これ以上やると逆効果」という上限も、耐乳酸トレーニングの間を何日空ければよいかも示した数字ではありません。

練習の組み方が決まると、練習以外に打てる手が気になってきます。

β-アラニンの効果は1〜4分の全力で報告され、60秒未満と反復ダッシュでは確認されていない

結論 · 要点2026.10 更新 · ISSN 2015 / Hobson 2012

耐乳酸トレーニングにβ-アラニンは役に立つか?

β-アラニンは、1日4〜6gを4週間続けると筋肉のカルノシンが増え、1〜4分の高強度の運動で効果が報告されています。60秒未満の全力と反復ダッシュでは、効果が確認されていません。

  1. 効果が報告された範囲:1〜4分の高強度の運動
  2. 効果が確認されていない範囲:60秒未満の全力と、反復ダッシュ
  3. 弱点:飲んだ後のピリピリ。1回の量を分けると弱まる
Trexler ET ほか (2015) J Int Soc Sports Nutr / Hobson RM ほか (2012) Amino Acids

β-アラニンの効果が報告されているのは、1〜4分の高強度の運動です。耐乳酸トレーニングと一緒に使って確かめた研究は、この記事の根拠には含まれていません。β-アラニンは練習の代わりにはなりません。

β-アラニンを1日4〜6g・4週間続けると、筋肉のカルノシンが増え、1〜4分の全力で効果が報告されている

β-アラニンは、カルノシンの材料になるアミノ酸です。国際スポーツ栄養学会の見解は、1日4〜6gを4週間続けると筋肉のカルノシンが40〜60%増え、1〜4分の運動で効果が大きいとまとめています(ISSN 2015)。男性13人の研究(一部の人で筋肉を採って測定)では、カルノシンが4週間で+58.8%、10週間で+80.1%増えました[21]。

β-アラニンの効果の大きさは小さめです。二重盲検でプラセボと比べた40研究・1461人の解析では、全体の効果量は0.18で、小さい効果に分類されます(Saunders 2017)。15研究・360人の解析では、運動の成績の改善の中央値は2.85%で、60〜240秒の運動では改善しました。ただし、決まった距離や仕事量を速く終えるタイムトライアル型の成績では差が出ませんでした[5]。

鍛えた18〜40歳の男性に絞った解析では、効果量は0.39で、4〜10分の最大努力では0.55でした[23]。効果が一番大きい時間帯は、解析によって1〜4分とも4〜10分とも分かれています。

β-アラニンは、60秒未満の全力と反復ダッシュでは効果が確認されていない

国際スポーツ栄養学会の見解は、60秒未満の運動では効果が支持されないとしています[4]。15研究の解析でも、60秒未満の運動では差が出ませんでした[5]。17本の比較試験をまとめた解析では、反復ダッシュの平均タイム・最高タイム・落ち込みの割合のどれにも効果がなく、量や期間を変えても結果は同じでした(Liang 2026)。

β-アラニンを検討する目安は、1本の全力が1〜4分続く競技かどうかです。全力が60秒に満たない競技や、サッカーのような反復ダッシュが中心の競技では、β-アラニンにお金を使うより、前の章の練習を組む方が先です。

β-アラニンの弱点のピリピリは、1回の量を1.6g程度に分けると弱まる

国際スポーツ栄養学会の見解と、人の101研究を調べた解析[24]で報告された副作用は、飲んだ後に皮膚がピリピリする感覚だけです。同じ見解によると、ピリピリは1回に800mgを超えて飲むと起きやすく、1回1.6g程度に分けるか、ゆっくり溶ける形の製品を使うと弱まります。通常は60〜90分で消えます[4]。

飲むのをやめると、増えたカルノシンは6〜15週間で元に戻ります[4]。飲み方の詳しい形はβ-アラニンの仕組みと飲み方の記事に、商品を選ぶ時の疑問はグロングのベータアラニンの口コミ記事にまとめています。

1本の全力が1〜4分続く競技で試すなら、ピリピリは1回の量を分けると弱まるので、量を自分で調整しやすい粉末が扱いやすい形です。

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  • β-アラニンは研究で毎日続けて使われた成分で、試合直前に飲んで使う物ではない
  • 全力が60秒未満の競技や、反復ダッシュが中心の競技には向かない
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よくある質問

Q. 練習後に乳酸を早く抜く方法はありますか?

A. 乳酸は、筋肉や心臓でエネルギーとして使い直される物質です[10]。全力の終盤に力が落ちる有力な説明は、筋肉の中のイオンの乱れです。終盤の失速を減らしたいなら、乳酸を抜く方法を探すより、ほぼ全力の反復で筋肉がイオンを処理する力を伸ばす方が狙いに合います。

Q. 耐乳酸トレーニングは毎日やってもいいですか?

A. 競技者の研究で使われた回数は週3〜4回でした[9]。片脚の膝を伸ばす運動を毎日7〜8週間続けた研究もありますが、6人を対象に片脚だけを鍛えた実験で、競技の動きではありません(Juel 2004)。毎日やってよいか、何回までなら大丈夫かを示した研究は、今回の調査では見つかりませんでした。回数は指導者と相談して決めてください。

Q. 高回数の筋トレでも、同じ効果がありますか?

A. 一部は重なり、一部は違います。活動的な女性16人が、15〜20回×3〜5セット・休息20秒の筋トレを行った研究では、反復ダッシュ・乳酸閾値・脚の筋力は伸びましたが、筋肉が酸を受け止める力ははっきりとは伸びませんでした(Edge 2006・筋トレの研究)。酸を受け止める力を伸ばすことが目的なら、高回数の筋トレだけで足りるとは、この研究からは言えません。

Q. 耐乳酸トレーニングだけをやっていれば十分ですか?

A. 研究の多くは、ほかの練習を残しながら、練習量を減らした分を置き換えて入れています。持久系のランナーの研究も、ゆっくり走を残した上で30秒走を入れました[17]。

まとめ

この記事で押さえたこと

  • 耐乳酸トレーニングで鍛えるのは、30秒〜4分の全力を終盤まで保つ力
  • 筋肉の中でカリウムや酸など複数のイオンが同時に乱れることが、終盤に脚が止まる有力な説明
  • 耐乳酸メニューは、20〜30秒前後のほぼ全力を休息を挟んで繰り返す形が研究の中心で、休息の長さの使い分けはまだ確立していない
  • 耐乳酸トレーニングは、研究では練習量を減らして置き換える形で入れた例が多く、効果は3〜9週間で出ている
  • β-アラニンは、効果の報告が1〜4分の全力にあり、60秒未満と反復ダッシュでは確認されていない

終盤の失速を減らす練習は、苦しさに耐える時間を延ばすことではありません。自分の全力が何秒続くかを確かめ、その長さに合った全力の本数と休息で練習を組むことです。全力が30秒〜4分続く競技なら、研究で使われた形をそのまま出発点にできます。

覆面アスリートが自分の経験を話す
覆面アスリート

ローイングのタイムトライアルで、腕も脚も化学反応でも起きたんじゃないかってくらい熱くなりました。剣道の素振りでも、腕が上がらなくなりました。

※あくまで個人の経験であり、万人に当てはまるものではありません。

覆面アスリートが読者に問いかける
覆面アスリート

私は、毎本を出し切る形の方が好みです。
あなたは ①毎本出し切る派 / ②短い休息で粘る派、どっちですか。
コメントで教えてください。

戦う君は、ひとりじゃない。アスリートRPG。

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参考文献・出典

出典リスト(26件)— タップで表示
  1. Iaia FM, Bangsbo J(2010)Speed endurance training is a powerful stimulus for physiological adaptations and performance improvements of athletes. Scand J Med Sci Sports ─ 鍛えた選手の研究のまとめ。30秒〜4分の高強度と反復を改善。PubMed PMID 20840558
  2. Hostrup M, Bangsbo J(2017)Limitations in intense exercise performance of athletes – effect of speed endurance training on ion handling and fatigue development. J Physiol ─ 0.5〜6分の運動でのイオンの乱れと、練習によるイオン処理の適応(抄録の範囲で引用)。PubMed PMID 27673449
  3. Mohr M ほか(2007)Effect of two different intense training regimens on skeletal muscle ion transport proteins and fatigue development. Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol ─ 13人。6秒群と30秒群の比較。PubMed PMID 17194727
  4. Trexler ET ほか(2015)International society of sports nutrition position stand: Beta-Alanine. J Int Soc Sports Nutr ─ 国際スポーツ栄養学会の見解。1日4〜6g・1〜4分・ピリピリ・60秒未満。PubMed PMID 26175657
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  6. Iaia FM ほか(2015)The Effect of Two Speed Endurance Training Regimes on Performance of Soccer Players. PLoS One ─ 若手プロのサッカー選手13人・試合期の最後の3週間。休息2分と40秒の比較。PubMed PMID 26394225
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  18. Bishop D, Girard O, Mendez-Villanueva A(2011)Repeated-sprint ability – part II: recommendations for training. Sports Med ─ 反復ダッシュの練習の総説。PubMed PMID 21846163
  19. Weston AR ほか(1997)Eur J Appl Physiol Occup Physiol ─ 鍛えた自転車選手6人・4週間で6回の5分インターバル。比べる群なし。PubMed PMID 9007451
  20. Iaia FM, Rampinini E, Bangsbo J(2009)High-intensity training in football. Int J Sports Physiol Perform ─ サッカーの高強度練習の総説。シーズン中に使える練習として整理。PubMed PMID 19953818
  21. Hill CA ほか(2007)Amino Acids ─ 男性13人。筋肉のカルノシン+58.8%(4週)・+80.1%(10週)。PubMed PMID 16868650
  22. Saunders B ほか(2017)β-alanine supplementation to improve exercise capacity and performance: a systematic review and meta-analysis. Br J Sports Med ─ 40研究・1461人。全体の効果量0.18。PubMed PMID 27797728
  23. Georgiou GD ほか(2024)Int J Sport Nutr Exerc Metab ─ 鍛えた若い男性の18研究・331人。効果量0.39、4〜10分で0.55。PubMed PMID 39032921
  24. Dolan E ほか(2019)Adv Nutr ─ β-アラニンの安全性の解析。人の101研究で、報告された副作用はピリピリのみ。PubMed PMID 30980076
  25. Juel C ほか(2004)Am J Physiol Endocrinol Metab ─ 6人・片脚の膝伸ばしを毎日7〜8週間。鍛えた脚と鍛えていない脚の比較。PubMed PMID 14559724
  26. Edge J, Hill-Haas S, Goodman C, Bishop D(2006)Med Sci Sports Exerc ─ 活動的な女性16人。高回数・短い休息の筋トレで、緩衝能ははっきり伸びず。PubMed PMID 17095936
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、医学的アドバイスではありません。紹介した研究の多くは少人数の研究です。持病のある方・治療中の方・妊娠中の方・未成年の方は、ほぼ全力の反復練習やサプリメントを始める前に医師・薬剤師にご相談ください。体調に異変を感じた場合は練習や使用を中止し、医療機関を受診してください。

この記事の用語

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イオン(Ion)

水に溶けると電気を帯びる粒子。カリウム・ナトリウム・カルシウム・水素(酸の正体)などがあり、筋肉の細胞の内と外で出入りしている。

この記事では、全力の終盤に力が落ちる有力な説明として、筋肉の中でこれらが同時に乱れることが出てきます。

反復ダッシュ(Repeated-sprint ability)

短い全力走を短い休息で何本も繰り返し、速さをどれだけ保てるかという力。サッカーなど球技の後半の走りに近い。

この記事では、20秒の全力走を休息2分で繰り返した群で、反復ダッシュの合計タイムが縮んだ研究として出てきます。

β-アラニン(Beta-alanine)

アミノ酸の一種で、筋肉のカルノシンの材料になる。サプリメントとして粉末などの形で売られている。

この記事では、1〜4分の全力で効果が報告され、60秒未満の全力と反復ダッシュでは確認されていない成分として出てきます。

スピード持久トレーニング(Speed endurance training)

ほぼ全力の短い運動を、休息を挟んで何本も繰り返す練習。研究では、耐乳酸トレーニングに近い形として扱われている。

この記事では、30秒〜4分の高強度の運動を改善したと報告された練習の名前として出てきます。

総説(Review article)

あるテーマについて、複数の研究の結果を集めて読み解いた論文。1本の実験ではなく、研究全体の流れをまとめたもの。

この記事では、同じ研究グループの後の総説が、イオンの乱れを練習の狙いとしてまとめた、という形で出てきます。

解析(Meta-analysis)

複数の研究の数字を集め、全体としてどれだけの差があるかを統計でまとめて調べる方法。メタ解析とも呼ばれる。

この記事では、「18研究」「15研究・360人」「40研究・1461人」のように、研究をまとめて調べた結果の紹介に出てきます。

乳酸(Lactate)

酸素が足りている時にも常に作られる物質。老廃物ではなく、筋肉や心臓でエネルギーとして使い直される。

この記事では、終盤の失速の有力な説明は乳酸でなくイオンの乱れで、乳酸が失速と全く無関係とまでは言い切れない、という文脈で出てきます。

ATP:アデノシン三リン酸(Adenosine triphosphate)

細胞が活動するためのエネルギーを蓄え、運ぶ物質。筋肉が力を出す時にも使われる。

この記事では、親指の筋肉に酸・乳酸とともに入れた実験で、疲労感や痛みの出方を調べた物質の1つとして出てきます。

最大酸素摂取量(Maximal oxygen uptake)

体が取り込める酸素の最大量。持久力の目安として使われる指標。

この記事では、鍛えた選手の成績の改善が、この値の伸びではなく筋肉のポンプの増加と関係していた、という文脈で出てきます。

ナトリウム・カリウムポンプ(Sodium-potassium pump)

筋肉の細胞膜にあり、ナトリウムとカリウムを出し入れするポンプ。細胞の内と外のイオンのバランスを保つ働きをもつ。

この記事では、鍛えた選手で見られた成績の改善と関係していた、筋肉の中の仕組みとして出てきます。

緩衝能(Buffering capacity)

酸を受け止めて、筋肉の中が酸性に傾くのを和らげる力。

この記事では、インターバル練習や重曹の研究で、練習による伸びが測られた指標として出てきます。

乳酸閾値(Lactate threshold)

運動の強さを上げていった時に、血中の乳酸が急に増え始める強さの境目。持久系の運動能力の指標のひとつ。

この記事では、重曹を飲んだ群で疲労までの時間とともにやや大きく伸びた指標として出てきます。

Yo-Yo間欠性回復力テスト(Yo-Yo intermittent recovery test)

往復走を短い休息を挟んで繰り返し、走れた距離を測る持久力テスト。サッカーなど球技の持久力の評価に使われる。

この記事では、若手プロのサッカー選手13人の研究で、休息2分の群が+10.1%になった測定として出てきます。

カルノシン(Carnosine)

筋肉の中にある、酸を受け止める物質。β-アラニンはその材料になるアミノ酸。

この記事では、β-アラニンを1日4〜6g・4週間続けると筋肉で増えるとされる物質として出てきます。

効果量(Effect size)

効果の大きさを、研究どうしで比べられるよう同じ物差しで表した数値。0に近いほど小さい効果とされる。

この記事では、β-アラニンの効果が全体で0.18(小さい効果)、鍛えた男性で0.39とされた、という数字の読み方として出てきます。

二重盲検(Double-blind)

参加者にも研究者にも、本物と偽物のどちらを使っているか分からないようにして比べる方法。思い込みが結果に入るのを減らす。

この記事では、β-アラニンとプラセボを比べた40研究・1461人の解析の条件として出てきます。

プラセボ(Placebo)

見た目や味は同じで、有効成分を含まない偽の飲み物や薬。本物との差を見るための比較に使う。

この記事では、β-アラニンの40研究の解析で、比べる相手として出てきます。

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